リ・バース~スパロボ学園 最後の日~ ≪最終話≫

3ヶ月ほど前から、一週間に一度カイロプラクティックに通ってます
やはり仕事上、目・肩・腰がぱつんぱつんになってしまい、昨年はずっと頭痛に悩まされていました
保険で通える接骨院では効果が出ず、さりとてカイロプラクティックって一回が高いんだよね、と悩んでいたのですが
・・・年明けにエイやと通い始めたら、あっという間に頭痛が治ってしまった・・・
メガネも度が合わなそうなぐらいだったんですが、今は落ち着いてます
やはり世の中、何でも安かろう悪かろうで、本気になったらちょっとお金をかけなきゃ駄目なんだ、と痛感した次第です


さて、お待たせしました
スパロボ学園のSS最終話です

そうは言っても
諸般の事情で遅れてしまいましたが、皆さん本当に待ってて頂けたでしょうか?
是非、そう言う方がお一人でもいらっしゃって頂けたら、書いた甲斐があったと言うものです

ご精読、ありがとうございました


第8話の続き】

ヱクセリヲンの中にある、広大な公園
見上げる空を、一条の光が駆けていく
「・・・アムロ・レイが行ったのか」
それでも、刹那の心は動かなかった
何を信じたらいい、何を求めればいい
それすら見えずに、彼に何ができるというのだろうか
「・・・やっぱり、行かないんですね」
うずくまる彼に声をかけたのは、碇シンジであった。既にプラグスーツに着替え、出撃する直前の様子である
「お前は・・・いや、お前"達"は、何故そんなに真剣になれる?」
自分たちの寄るところが全て偽りであり、そこに守るべき事柄が無い可能性を示唆されてなお、何故に彼らは世界を守り維持することに力を注げるのか
刹那には全く理解できないことだった
「それを言ったら・・・僕だって、自分のエンディングは、三パターンもあるし
TV版エンディングに、DVD版でのエンディング、そして映画版でのエンディングと、それぞれバラバラの"最後"を持つシンジには、ある意味この程度のことはどうということは無いのだろう
「近々、もう二つエンディングが決まりそうだし」
「・・・そんな・・・そんな馬鹿な・・・」
「新映画版があって、それと雑誌の連載がね・・・10年近く経っても終わってなくて・・・」
だがどのエンディングにしろ、とても救われる内容とは言いがたいのが、エヴァがエヴァンゲリオンたる所以である
「そう言う最後が決まっていても・・・それでもね」
シンジの顔には絶望や、諦めという色は無かった。むしろ明るい色さえ認められる
「ここに居るときだけは・・・学園の中でだけは、明るい未来を夢見て居ることが許されてるんだ」
そう
少なくともスパロボという世界では、報われなかった自分から離れようとすることが許される。いや、そう望む意思を受け取ることができ、発揮できる。それはキャラクター達自身だけでなく、それこそフラスコの外側すら
「確かに・・・そうやって得た物は、正式なものじゃ無いかも知れないけれど」
そこにつかめる幸せがあるなら、そのために力を尽くしたい
「僕も、ミサトさんの言うように、我が儘を通したいんです」
その幼い顔立ちの中に、"覚悟"を秘めている。自分より年下の・・・いや、自分がマイスターになった頃と同じ年頃の少年が
「シンジ君、我々も行くぞ」
彼を迎えに来たのは、先の戦いで何とか戻ってきたギリアムだった
ギリアムはOGS世界を出た後、破損した次元断層に迷い込んでいたのだが、真ドラゴンのゴウにその存在を感知され、どうにか救われていたのだ
「・・・あんたにも迷いは無いのだな」
「もちろんだ。俺の・・・たった一人の絶望で、ここで今を生きる連中の、何を決められる?」
ギリアムは刹那の方に向き直ると、キッパリとそう言い切った
彼はかつて、この世界が『実験室のフラスコ』であることを、一番最初に悟った男である
そしてその事実に絶望し、フラスコを"割ろう"とした、最初の男でもある

だがその"野望"は、フラスコの住人達によって阻止され、彼もまたそれを良しとして、フラスコの中に留まっている
「確かにガンエデン・・・いや、ケイサル・エフェスは、俺が最初に感じたような絶望を感じたのかも知れん・・・ヤツがそもそも持つ"絶望"とは別に」
ケイサル自体が、α世界を無に帰そうという野望を持ち、実際そのために大きな戦いが起きたわけだが
「いや・・・それこそヤツの言う、"外"の言葉に過敏に影響されたか・・・俺達自身、この世界がフラスコの中にあることなんて、とっくに分かっていることなのに」
ふっと遠い目をするギリアムに、刹那は質問を続けた
「その"外"というのは・・・一体何なんだ?」
「そうだな・・・ありたいていに言えば、スパロボの存続自体を左右するもの、と言うことで間違いは無いかも知れん」
ありたいていにと言うが、それはあまりに強大且つ恐ろしい物を指していないか
「"彼ら"の一部が、スパロボ内で起きる物事に納得しなければ、片方で認めている者達の心理を"欺瞞"と言うだろうな」
人と人が完全に分かり合うことができず、それ故に争いが起きる
それは彼らの外側の世界でさえそうなのだ
「実際、スパロボは終わらせるべきだ、という話が良く出ているという噂も聞く」
そう言う意見が出ること自体は、ギリアムでもビアンでも、止めることはできないだろう
「だが、だからといって我々が"終わる"時を、我々自身が決めるつもりは無い。俺達は、生きているんだからな・・・どんな形であれ
「・・・生きて、居る・・・」
出撃するために去って行くギリアムの背を見ながら、刹那はその言葉に自分が求める、『生きる』という単語を見いだしていいのか、苦悩していた


NULL空間の中で、黒い光に包まれているR-1
いや、R-1自体が全てを飲み込む、あの黒い光の根源となっているのだ
そこへ、白い流星のようなモノが近づいていった
アムロのνガンダムである
「・・・死人がいつまでも、出しゃばるんじゃないよッ!」
「そうかい!!」
憎々しげにそう言う彼の言葉を、アムロは聞き流した
そんなことは、言われなくったって分かっている
事実、それで苦悩したことだってある
だが、死ぬとき・・・舞台から退場するときを、こんな風に強要されるのを良しとするほど、落ち込んでいるわけでは無いのだ
「"貴様"ほど滅びを急ぎ過ぎもしなければ、この世界に絶望もしちゃいない!!」
νガンダムはそのままの勢いで急接近し、R-1に取り付こうとする素振りを見せた
それを見て、リュウセイがT-Linkナックルで迎撃しようとしたときだ
背中から突然現れた、サザビーがR-1を上から押さえ込みにかかる
「なに・・・?」
「今だ、お前達、かかれ!」
シャアの声に合わせて、R-1の前面からZZが覆い被さるように飛びかかり、左手をΖが右手をF91が、左脚をX3が右脚をV2が抑えにかかる
「合わせろ、アムロ!」
「行くぞ!この戦場にいる全ての、スパロボを愛する者達の思いを、このサイコフレームに載せる!!」
アムロの声に合わせて展開されたフィン・ファンネルが、がっちり組み合ったνガンダムらの周囲を包みこみ、内部からサザビーのサイコフレームと共振し、目映い光を展開させる
「人の想いを力にするのがニュータイプなら、全てを集めることだってできるはずだ!」
「みんな・・・みんなの記憶を、思い出を貸してくれ!」
「この身体を、みんなに預けるっ!」
「僕たちが、人の革新だというのなら、その力でリュウセイさん一人、救えないなんてことが、あるもんかーッ!!」
果たしてそれが、マクロスにヱクセリオンにハガネに、そして展開している全ての機体を包み込み、渦を巻いて光の柱を形成していくのを、刹那は唖然として見ていた

「なぜだ?彼らは何故あんなに純粋に、今ここにある自分たちを信じることができるんだ!?」
リュウセイは自分たちが、スパロボという歪んだ妄想の鏡に映った影だと言った
だとしたら、彼らのその思いでさえ、フラスコの外側からの干渉で無いと、誰が言い切れるのだろうか
しかし、光の柱から、迷いのいっぺんすら感じ取ることはできない

「なんだ・・・ッ、これは!?」
サイコフレームの輝きを導いていたアムロは、その影響か真っ先にリュウセイの精神に触れた
そこで見た光景は、彼を絶句させるのに充分だった
本来、連綿と繋がり、道を造って繋がっているはずの、人の心や記憶
それがずたずたに切り裂かれ壊され、断片化して暗闇を漂っている
あるところには、甲児や忍とバカをやっていた風景らしいが見えるが、その中の甲児達の姿が削り取られ、失われている
方やイングラムやユーゼスとの壮絶な戦いの記録が、粉々に打ち砕かれてしまっている
アムロは直感的に感じた。リュウセイはただ、あの空間の触媒になっているのではない・・・彼自身が真っ先に壊されていたのだ、と
「これでは俺達がどれだけ呼びかけたところで・・・意味を成すはずが無い!」
彼は本当に分からなくなっていたのだ。自分自身の何たるかが
そんな中で響く、一つの声
(全てを修正する。正しい姿に戻す。この世界を無に返す)
「・・・これはッ!」
聞き覚えのある・・・いや、忘れもしない、あの霊帝のおぞましい声
それが響き渡る度、ただでさえ壊されている彼の心が、またも黒い物に飲み込まれていく
このままでは、リュウセイ・ダテというキャラクター自体が"死んで"しまう
「だが・・・だからこその、人の心の光だ!」
アムロの言葉に呼応するように、あらゆる想い、人々の思い出が、R-1の装甲を念動フィールドを越えて、リュウセイへと導かれ、弾けた
それが、暗黒に支配されてしまっている、リュウセイの心の中に飛び込んだサイコフレームの輝きが、砕け散ろうとしていた精神の中を乱舞する
それは互いをつなぎ合わせるように、バラバラになった記憶と記憶の橋渡しをし、あるいは傷ついたそれを癒すように間を埋めていく
「あ・・・あ、あ?・・・ぐあああぁぁぁっ!!
壊れ、忘れかけていたこと、何処かで思い出せなかったこと
そこに、"友"達の全てが一気に流れ込んだことで、彼の精神はオーバーロードし、そうしてあの瞬間への封印が解かれた
それは、キンバリー基地で捕らえられたときに遡る
拘束される際、そのままにされてなるものか、と無理に連邦兵を引きはがそうとしたため、逆にみぞおちに一発入れられたリュウセイは、気を失ってしまっていた
そこから目を醒ました彼は、自分が何か妙な装置に束縛され、コード類に絡み取られていることに気づいた
「な・・・なんだよ、これ・・・?」
「おや、目が醒めたかね」
聞き慣れない声がする
その声がした方に、どうにか視線を向けてみると、アフリカ系の肌をした白衣をまとった金髪の男性が、こちらに背を向けながら何かの機械をいじっていた
「気分はどうかな、リュウセイ・ダテ君?」
しばらくしてから振り返った男は、まるで珍しい玩具を見るかのような視線で、リュウセイの顔をのぞき込んできた
「誰だよ、あんた・・・」
「これは失礼。私はルーザー・ブラックマン。最近、念動能力者の研究を始めた者だ。だから私の方は、君のことはよく知っている」
また新しい設定か?・・・と考えたリュウセイは、彼の存在が今回のことに関わっていることを、何となく察した
「要するに、あんたが黒幕って事かよ」
「当たらずといえども遠からず、というところだね」
だとするなら、とリュウセイは唇を噛んだ。自分が知らないところで、アヤとマイも同じような目に遭っている可能性があるからだ
(ライは・・・どうしたんだ?なんか、仕掛けでもしててくれりゃあ・・・)
だが、次にブラックマンの口から出た言葉は、リュウセイの心理を見透かしたような無いようであった
「助けを求めても無駄だよ。もうこの基地には、君しか残っていないからね」
リュウセイはその言葉の真意を、すぐには分かりかねていた
「私の研究対象としては、君しか許可が下りなかったのだよ。あの姉妹は、コバヤシ博士が頑として首を振らなかったそうでね」
「え・・・」
確かにそれは分かる。だが
「ライディース少尉は、ブランシュタイン家の関係者ということで、お咎め無しで返されたそうだよ。まぁもっとも、ただの人間に私は興味が無いが」
もちろん現実には、この時点ではまだライは司令官室でやり合っていたし、コバヤシ姉妹は移送される寸前で、基地には残っていた。だがそれを、リュウセイが知る由も無い
だからリュウセイには、ブラックマンの言葉が全てを表している、と理解するしか無い。そうだとすればそこには、大事なことが一つ欠けていないか
「そんな・・・じゃあ、俺は・・・?」
「別に、君がどうなったところで、困る"お偉いさん"は居ないわけだからね」
つまり、彼は基地に捨て置かれたのだ、ということになる
特殊な事情を加味しなければ、スカウト上がりの一般兵であるリュウセイには、寄るべき大樹が無いのだ
「う・・・嘘言ってんじゃねぇよ!」
必死で否定しようとするが、現実この時点でリュウセイの心には、大きな傷が穿たれてしまった
「何、こんなことは、今に始まったことでは無いのだろう?・・・君にはね」
リュウセイに見えないところで、ブラックマンが何かのスイッチを押した
その途端彼の脳裏にどす黒いイメージが流れ込んでくる
かつて、イージス作戦が完了した直後の頃
彼を拘束しに来た連邦兵の傲慢な態度
説明らしい説明もなく拘束されたときのこと
不当な虐待
心のない罵声
閉じ込められた牢獄で、リュウセイが体験したことだった

「う・・・うわぁぁ!やめ・・・やめろ、なんでこんな・・・!」
それは彼が意図的に忘れようとし、思い出さないようにしてきていたことであった
「拒絶も、否定もできない話では無いのかい?何せこれは、君の役回りなのだから」
有能な念動能力者と言うことが災いし、バルマーに狙われ利用されそうになり、地球の者たちからは煙たがられてしまう
愛した地球に疎まれ、暗い牢獄に閉じこめられる
「そう、リュウセイ・ダテとは、そう言う役なのだよ」
「やめろ・・・!俺には、俺にはそれでも、信じてくれる仲間達が、支えてくれるヤツラが・・・っ」
それでも、必死で抵抗するリュウセイの脳裏に、またどす黒いイメージが流れ込んでくる
安穏と書類仕事をしているアヤ。彼女に仕事を教わり、少しずつ社会復帰するマイ
教官のような役割を、満足げにこなすライ
自分のことなど忘れたかのような、平穏な時間が流れている風景
もちろんそれは、ブラックマンが作り出した装置による幻影でしかないのだが、今の彼自身には非常な説得力を持つものではあった
「やめろ、やめてくれ・・・!こんなの・・・ッ!!」
「何故そんな目に遭うと思う・・・?」
幻影に苦しむ彼の耳元へ、ブラックマンがそっと囁いてくる
「フラスコの住人である君は、そう言うように苦しまなければならないと、決めている者達が居るからだよ」
「・・・俺達が・・・フラスコの中の混沌の中に居る・・・ってぐらい、知ってる!」
そんな話なら百も承知だ
楽屋落ちだろうが中の人ネタだろうが、どんなときでもそれを意識して生きてきた
今更それを言われたところで、何の問題があると言うんだ
「ほう、なら君は、こんな風にして自分の役柄が決められるのを、良しとするのかな・・・ほうら、聞こえるかな?フラスコの外側からの声が」
ブラックマンの言う声が、遙か彼方から嵐のように襲いかかってくる
それは、リュウセイの人格を否定しているもの、行動が気にくわないという物、果ては彼の存在そのものを否定しているものまであり、それら罵声讒言の数々が矢のように降り注ぐ
「な・・・なんだよ、これ・・・?」
彼は戦ってきた
命をかけて地球を守ろうと
それは自分自身のキャラクターとは別に、彼自身がやりたいと願い使命とし、どんなときでも迷うこと無く続けてきたことだ
スパロボの主人公として、当たり前に続けてきたことが、どうしてここまで酷く否定されなければならないのか

言いしれぬ哀しみと、理不尽さへの憤りに、思わず心が堅くなるリュウセイ
「可哀相に」
そのような彼の心境を見透かしたように、ブラックマンが同情の言葉をかけてくる
「フラスコの外側からそんな扱いをされた挙げ句、この内側の世界でさえ見捨てられていく。あまりにも哀れだな」
「う・・・あ、ああ・・・」
弱々しい声を上げるリュウセイを、ブラックマンは薄笑いを浮かべながら覗き込む
リュウセイはすでに、システムによって流し込まれる幻覚に飲まれているのか、目から光を失っている
それを確認したブラックマンのシルエットが、途端に崩れて黒い霧のような物に変化した
「このフラスコの世界は、内も外も正しい姿を写しては居はしない。欲望と雑念が綯い交ぜになった、矛盾ばかりの穢れた世界なのだ」
まるで這い寄るようにリュウセイを取り巻いていくその霧が、なおも彼に囁き続ける
「彼らは無遠慮だ。そなたが気にくわないというだけで、存在を否定する。無用の存在とレッテルを貼る」
どれだけリュウセイ自体が世界を愛していても、要らなくなれば存在を忘れ去られてしまう。そう言う存在は実際、過去に無かったわけでは無い
『だが・・・余は、いや余だけが、そなたを必要としている』
「な・・・?」
どこかで聞いたことがあるような、その呼びかける声の主を、今のリュウセイは正確に捉えることができない
『余はそなたに真の使命を伝えるため、こうしてヒトに交じって降臨したのだ』
もしその光景を外から見ている者が居たとしたなら、そこに6本の腕と2本の角、3つの赤い目を持つ異形の物の影があったのを、確認することができたろう
『このような世界を終わらせ、全てを無に帰し、正しい姿に戻すためには、そなたの力が必要なのだ』
「俺の・・・力が・・・」
短い単語ではあったが、支えを失いかけていた彼にとっては、甘い誘惑の香りを漂わせていた
『そう。ガンエデンに選ばれた、マシヤフとしての使命を果たすのは、そなたしか居ない』
この台詞には、さすがのリュウセイも一瞬強ばった表情を見せた
「それは・・・!ち・・・違う!!俺は地球を守る、SRXチームの・・・」
R-1のパイロットとして、それを認めるわけには行かなかっただろう。だが、声の主はその反応さえ分かっていたようだった
『そんな"役割"など、誰も認めていなかったでは無いか?』
改めて響く、"外側"の声
『SRXなんて運用面倒くさいよな』
『デザインもださいし』
『3機いっぺんに出す枠ねーんだよ』
『正直、アレ居なくてもクリアできるし』
『リュウセイ邪魔』

まるで呪いのように落ちてくる罵声に、リュウセイは思わず耳を塞ぎ、苦悶の声を上げる
「イヤだ・・・止めろ、止めろ!」
『この世界に真実があるなら、そなたがこんな目に遭うのはおかしな話だな?』
いくら耳を塞いでも、その声はリュウセイの脳裏に直接響くようだった
『だから余は真の使命を伝えに来たのだ』
「し・・・真の・・・バカ言うなッ!」
だがそうやって振り払おうにも、自分がどれだけ否定しても、それを支持してくれる仲間がいなかった
『これがそなたの真の役割なのだ・・・使命なのだ・・・それを果たす時が来た・・・』
「違う・・・違う、ちが・・・しんノしめい・・・ううっ、違う!」
何度となく繰り返されるその言葉は、実際には催眠暗示のように彼の心を浸食し、徐々に破壊しはじめていた
「止めてくれ・・・!助けて、誰か・・・!!」
そんなリュウセイの目の前に、アストラナガンの姿が見えたのは、その時だった
「イングラム・・・教官!?」
その時彼は、一条の希望を見つけたと感じた。すでにイングラムとは和解しているのだから、尚更そう感じたのだろう
だが当のイングラムは、目の前の黒いものの中に、R-1が隠されているなど知る由もなかった
気の急いていたイングラムには、中から発せられているリュウセイの念動力を、感じる余裕を失っていたのだ
そのまま、黒いものを"敵"と認識した攻撃が、R-1に叩き込まれてくる
「・・・ッ、教官、なんで!?」
『だから言ったであろう』
その声はこの瞬間を待っていたのだ
『彼らという仲間自体が幻想だったと言うことだ』
その言葉に、とうとうリュウセイの何かが壊れた
「う・・・うああああッ!」
向けようのない怒りの拳がアストラナガンを捉え、そうして一発で完膚無きまでに叩きつぶしてしまった
「勝った・・・?あのイングラムに、たった・・・一発で?」
肩で息をしながら、呆気にとられているリュウセイに、さらに声が響く
『そう、そなたが余の・・・マスターたる余の言葉に従い、正しく力を使ったためだ』
「・・・正しい、ちから・・・」
最早リュウセイに、その声を拒否する余裕は無かった
『我が声に従い、使命を全うすること。それが真実のお前の姿だと、判ったか』
「し・め・い・・・・・・全・・・て・・・この世界を・・・無に返す・・・」
『それがガンエデンに選ばれた、マシヤフとしての使命。我が命を果たせ』
「使命を・・・果たせ・・・・・・マスターの・・・命令・・・従え・・・」
『そなたこそがまさしく、最強のサイコドライバー。余が待ち望んだもの』
「・・・最強・・・のサイコ・・・ドライバー・・・マシヤフ・・・使命・・・・・・」
まるでその言葉が染みこんでいくように、彼の顔に黒い邪悪な文様が駆け巡る
いや、その文様が浮かぶと同時に、そこから剥がれ落ちる物があった・・・それは後にアムロが見るもの。つまり、壊れていく彼の記憶や心そのものであった
「はたセ・・・しめいヲ、は・・・たせ・・・」
『そう、生まれ変わるがいい、我が下僕として!』
やがて彼を拘束していた黒い霧は、その身体全てを覆い尽くしてしまった
しばらくコクピット内にあったそれは、そこを這い出して機体の外に抜け出し、そこで再び人の姿を取り始めた
それは確かにリュウセイだったが、先ほどの文様・・・つまり精神の破壊は全身に及び、髪のあちこちが赤く染まっていた
『目覚めよ』
リュウセイはその声に合わせて、目を見開いた
その瞳は、無理矢理刷り込まれた憎しみと絶望で、黒くよどんでいる
そして、どんな不幸にも負けてこなかった、あの友愛に満ちた暖かい表情も消えてしまっていた
『どうだ、生まれ変わった気分は』
声にそう問いかけられて、リュウセイは半ば薄笑いを浮かべたように見えた
「はい、全てから解き放たれ、とても晴れやかな気分です」
その言葉に、声の主も嗤っているように聞こえた
『ではリュウセイよ、改めて問おう。我が声に従い器となり、我が剣となって戦うか?』
「もちろんです」
リュウセイはためらいなく膝を折り、頭を垂れた
「何なりとご命令下さい、マスター」
この時点で、彼の中に普段存在していた『地球を護るSRXを駆る正義のパイロット』という自負は、完全に『マスターのために戦う』という感情に書き換えられてしまっていた
今の彼にとっては、声の主の命を受けることが至上の喜びであり、そのために自身がどうなるかと言うことも、どうでもいいことであった
そして、声の主が誰であっても、それを疑問に思う記憶を抜かれてしまっていた
『ではお前に、三つの僕を従える力を与える。その力を以て、かの世界全てより希望を奪うのだ』
「仰せに従います。マスター・・・ケイサル・エフェス
(・・・なんで・・・なんで、俺は!?)
失っていた記憶、壊れた感情という『ヒビ』に、サイコフレームを通して流れ込んできた『仲間』の思いが、癒しのように広がったことで、リュウセイはやっと自身が元々持っていた心を少し取り戻すことができた
そして自分が頭を垂れた者が、本来そこにあってはならぬ者であることを、ようやく自覚し驚愕した
"た・・・い尉・・・アム・・・ロ・・・大尉・・・"
アムロは闇とサイコフレームの光のせめぎ際から、リュウセイのかすかな思考を感じ取った
「少尉!?」
アムロの思惑通り、彼に仲間達の思いが伝わったのだ。だが、彼の口調から、何か予断を許さないことが起きようとしているようだ
"俺の・・・俺のな・・・かに・・・あいつが、いる!"
「あいつ?・・・まさか!」
リュウセイは何かを必死で伝えようとした。だが
(もう遅い)
死刑宣告とも取れる声がリュウセイの脳内に響く
「ぐあ・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
途端、彼の全身に走っていた邪悪な文様が、まるで生きているように彼の体を黒い闇に飲み込んでいく
「なんだと!?」
R-1から『闇の奔流』ともいえるような洪水が起こり、それらが周囲で待機していた機体に襲いかかりだした
「クッ、限界・・・のようだ」
「すまない、後を頼む・・・」
何とか耐えようとしていたアムロとシャアだが、奔流の力が余りに強かったのだろう。キラキラと輝きだしたかと思うと、ふっと目の前から消滅してしまったのだ
「アムロさん!」
「シャア・アズナブル!?」
闇の奔流は、彼らニュータイプを襲っただけではなかった
戦場を駆け巡ったそれが収まった後、その場は余りに悲惨な状態となっていた
「ガルド!?ガルドォォォ!!」
「フォッカー隊長に・・・一条君まで?」
無残な姿をさらけ出す初代マクロスや、そこから消えた人々を呼ぶ声
「馬鹿な、オーラシップが・・・まるごと?」
「ショウ、マーベル!シーラ様・・・どこ!?」
原作のエンディングが波及したためだろう、ダンバイン勢はチャムを残して全員が、その姿を消してしまっていた
「くっ・・・まだよ、まだ膝を折るには・・・!」
ラー・カイラムの環境で粘っていたミサト達だが、そこにもあの波動が到達してしまう
その瞬間、ミサトの姿がまるで舞い散る桜のように、その場から消えた
「ミ・・・ミサトッ!!・・・いやぁぁぁ!
事前に聞かされていたとは言え、その瞬間を目の当たりにしては、あのスメラギであっても叫び声を上げずには居られなかった
「みんな・・・みんな、死んでいく。こんな死に方・・・」
「カミーユさん、しっかりしてよ!」
力なく流されているΖの腕を、ジュドーのZZが必死に掴んだ、が
「大きな星が、点いたり消えたり・・・彗星かな?」
「ちょっと、カミーユさん!?」
余りの負の念に、カミーユの精神崩壊フラグが立ってしまっていた

それら悲惨な叫びが上がる中央にあった姿に、甲児は怒りの余りマジンガーのコントロールパネルへ、壊しそうな勢いで殴りかかった
「やっぱてめぇだったか、ケイサル・エフェス!!
そうだ。闇の渦巻く中心にあったのは紛れもなく、あの異形の姿で佇むケイサル・エフェスであった
『再会を懐かしみたいところだが、最早そなたらの運命は決しておる。そのまま滅せよ』
より一層絶望へと至る波動が、スパロボ学園メンバーに襲いかかる
「馬鹿な、貴様とてスパロボの一部だろうに!」
ヴィンデルの言うとおりだ。スパロボ学園が消えれば、OGS世界が消えていけば、ケイサル・エフェスさえも消えゆく運命なのだ。なのにこの所業は、自殺行為としか思えない
『我自身をも虚の存在。虚より虚に生まれ変わる愚は承知しておる』
ケイサル・エフェスの目的は、負の無限力とも言うべきその力で、世界を終息させて新たな世界を創ることであった。だが妙な話、OGS世界から生まれたケイサル・エフェスが、どう足掻こうともそこにはOGS世界が存在し続ける。当たり前の話だ
「ならばなおさら、この行いはなんだ!」
『我が求むる真のあるべき世界とは、無。静寂の支配する、安息の地』
「なんと!?」
今までのスパロボ世界のラスボスにおいて、本当に世界を無に帰そうとした奴らというと、『D』のペルフェクティオと、『スクコマ2』のムラタくらいだろうか
『何も恐れることはない。そなたらの記憶自体が、全て虚だったのだ。何もかもが元に戻るだけなのだ』
「・・・ふざっけんな!」
怒りの声を上げたのは、ジュドーだった
「俺はまだ覚えてる、アムロさんのこと、シャアのオッサンのこと、カミーユさんのこと、シーブックのことだってウッソのことだって、みんな覚えてる!俺が判ってるなら、みんな嘘じゃないッ!みんなは、死んだり消えたりしてないッ!!」
『自らの生の終わりに於いて、人類に絶望したお前が言うか』
「絶望したんじゃない、信じてたから選択したんだ、新しい道を!お前みたいに、何でもかんでも捨ててるヤツと一緒にするな!!」
ジュドーの必死の叫びに呼応してか、ZZのバイオセンサーの光と残っていたサイコフレームとが共鳴し、戦場に新たな波動を作り出す
「その通りだぜ、ジュドー、良く言ったぁぁぁ!」
彼の声に真っ先に呼応したのは、ソーラーアクエリオンを操るアポロであった
「不動のオッサンの言葉が、俺はようやく分かったぜ!」
「アポロ!?」
急激にプラーナの値を上昇させるアポロを、シリウスもシルヴィアも何事かと見上げている
「俺達が忘れちまったら、アイツらは本当に死んじまうんだ。居なかったことになっちまう!でもな、頭が悪い俺だって判る。アイツらは生きてたんだ!それを分けわかんねぇ理屈で、へし曲げられてたまっかよォォ!!」
アポロはかつて経験してきた、大切なモノを奪われる苦しみを思い出し、それ故にケイサル・エフェスが許せなかった
「行くぜ、シリウス、シルヴィア!」
「よし、合わせよう」
「みんなを無になんか還させないんだから!」
ソーラーアクエリオンの太陽の翼が、目映い光を放っていく。それはまき散らされていたサイコフレームの粒子と共振し、虹色の光へと昇華していく
「無限!交差拳!!」
そうして放たれた拳は、虹色の光をその中に巻き込み、闇にのまれそうになっていたスパロボ学園メンバー達を、再び照らすかのように空間いっぱいに広がっていった

「生きている・・・生きているんだ、みんな・・・!!」
彼の前を通り過ぎていった、全ての者達が言った
『生きている』のだと
この、血を吐くような生への固執は、嘘でも作り物でもなんでも無い
もしそうだとしても・・・だから何だというのだろう
我が儘だっていい。その先に未来があるのなら
この想いを、叫びを守らずして、何の革新か、
彼らを信じ続けなくて、真のイノベイターなど名乗れない
人同士でさえ、分かり合うなど出来はしない
「刹那・F・セイエイ・・・未来を切り開く!」


その光の中、泣き叫ぶ男の子の声があった
「うああ、宇宙太、恵子!どこ行っちまったんだ!?」
原作に於いて、周囲のあらゆる人々が特攻で逝き、その通りにザンボエースだけが残されていた。その中で勝平は、突然の孤独に戸惑い、恐怖に震えていた
「しっかりしろ勝平君、それでは君までもヤツに飲まれる」
駄々っ子のように暴れているザンボエースを、万丈のザンボット3が抑えにかかる
「煩いよ!おれはアンタを捜してるんじゃない、俺は・・・」
どうやら今の勝平には、万丈と出逢っている記憶が飛んでいるようだった
「・・・勝平君!」
それに気づいたのか、万丈は聞いたこともないほど怖い声で、勝平の名を呼びつけた
「う?・・・あ、万丈の・・・兄ちゃん??」
勝平の声を聞いたとき、万丈はふっと安心したような笑顔を彼に向けた
『ほう。全てが決着した後、諸々のモノを捨てた男が、このようなときには記憶に執着するか』
「それとこれとを一緒にしてもらっては困る、ケイサル・エフェス」
万丈はケイサル・エフェスを睨み返した。その目にはありありと、怒りの炎が宿っている
「確かに僕は物語の終わりに於いて、全てを捨てた。それは、僕自身が破嵐万丈という存在から決別するため、自分で選んだこと。だが、人に強要されて記憶を失う、増して貴様のような存在の糧となってそれが消えるなど、許しておけるはずはない!」
「ほう、たまには気が合うものだね、噂の破嵐万丈」
ずいっと出て来たのは、ビッグオーに乗ったロジャーであった
『メモリーを求め、メモリーに惑わされる舞台で踊るそなたが、今更メモリーを失ったところで何を悲観することがある?』
「パラダイムシティの舞台だけであれば、果たしてそれでもよかったかも知れんがね」
ロジャーはビッグオーの射線を、しっかりケイサル・エフェスに合わせていた
「スパロボという舞台では、出演者に求められるのはアドリブ。それ以外はノーサンキューとなっている。アドリブは経験によってしか演じられん。そして私は、この舞台から降りる気はない。であるなら、君のようなシナリオを強要する演出家には、退散することを要求する!」

その時、ヱクセリオンの中から、一条の光がケイサル・エフェスに向けて進んでいった
「あれは・・・」
「ディス・アストラナガン?クォヴレーか!」
そう
それは倒れていたはずのクォヴレーだった
「遅れてすまない。奴を探すのに手間取った」
「ヤツ?」
「説明は後だ。ケイサル・エフェスを牽制しておいて欲しい」
クォヴレーが探していたモノは、次元断層の狭間の狭間、とんでもない迷路にあった。探すのを諦めようかと思うほど、恐ろしいところだった。だが、スパロボ学園の中の人々の光が、クォヴレーの行く手に光を射したのだ
彼はそのままディス・アストラナガンを、ケイサル・エフェスに直進させると、その身体に右手をガッっと突っ込んだ
『ぬぅ?・・・貴様、今更何をする』
「リュウセイは返してもらう」
クォヴレーは言いきった。だが、ケイサル・エフェスの方はそれを嘲笑った
『貴様にも判っておろう。アヤツは我が復活のための苗床となり、消えた。いかなその機体であったも、不可能なことを望むモノではない』
「悪いが冗談を言うつもりも暇もない」
彼の方はとにかく真面目であった。彼の言う『ヤツ』というモノが、それほどの自信を持たせる要因なのかも知れない
『ちょうどよい、貴様を今度こそ、取り込んでくれる』
ケイサル・エフェスは、闇の手をディス・アストラナガンに向けた。そのまま機体を捉えようとしたとき、その前にヱヴァンゲリヲン初号機が割り込んだ
「シンジ・・・か」
「クォヴレーさん、早く!3分持たないッ!!」
彼を助けるためにシンジは、アンビリカブルケーブルをパージしていた
「僕だって忘れたくない、トウジのこと、アスカのこと、綾波のこと!もちろん、綾人さんやクワトロ大尉のことだって!僕は、僕はみんなと一緒に生きてきたんだ!!」
だが、ATフィールドとて万能ではない。徐々に押されそうになるシンジだが、今度はそこにゼオライマーが援護に入る
「僕だってそうだ。僕自体が作り物の、ただの器だけど・・・マグネイト・テンのみんなと、あの地球を救った経験は、少なくとも今ここに居る僕のモノだ」
ゼオライマーの次元連結システムは、既に最大稼働していた
「僕は今を大事にしたい・・・いいだろう、美久」
「判ってるわ、マサト君・・・私も、こうしている自分が、好きだから」
ああ、とクォヴレーは笑った
彼らの思い、彼らの願いがあるなら、必ずリュウセイは取り戻せる
彼を取り戻すことで、世界を取り戻すことだってできる
「だから・・・帰ってこい、リュウセイ!
クォヴレーは、ディス・アストラナガンの腕を、いっそうケイサル・エフェスの躰深くに埋めた
『無駄だと言うことを、何故受け入れない。それこそが未来への道を閉じ、過去にしがみつく行為だと言うことを、何故理解しない』
「黙れ!過去にこだわっているのは、貴様だ!!」
ディス・アストラナガンの光跡を追うように現れたのは、GN粒子を放って跳ぶダブルオークアンタであった
「変わろうとせず!現状を否定し!全てを滅ぼそうとする!それこそが最も選ぶべきで無い、過去への固執だ!!」
刹那の叫び声に呼応し、クアンタのGNドライブは眩い光を放ちはじめる
一面に広がる、闇と言う言葉も足りないほどの、圧倒的な虚無の空間
その一角で、リュウセイの"魂"は漂っていた
しかし、その身体は既に原形を留めぬほどバラバラであり、最早虚無に喰われるのは時間の問題という状態であった
「ああ・・・やっちまった、俺・・・」
そうは言っても、何をやってしまったのかすら、もう思い出せない
ただ、大事なモノを傷つけ、失ってしまった、と言う後悔の念だけが、僅かに彼の記憶に残っていたようだった
『リュウセイ、目を醒ませ』
どこかで聞いた声が、薄れ行く彼の意識を引き戻した
怠そうに目線を上げた彼の目の前にいたのは、一番最初に彼が失ったものであったが、それが何か思い出せそうにも無かった
『・・・済まなかった』
"彼"は開口一番、そうリュウセイに謝意を表した
『俺があの時、お前のことに気づいていれば、少なくともここまで破滅的なことは、起こさずに済んだだろう』
"彼"・・・つまりイングラムは、己の軽率さがリュウセイを壊すきっかけになったことを悔いて、そう言った

時空を旅していた彼は、OGS世界から微かにケイサル・エフェスの気配を感じ取り、その調査に向かっていた
だが、それはすでにケイサル・エフェスに察知されており、あの場面で彼はクストースに追われていたのである
その状態で慌てていたばかりに、ケイサルの力に隠されていたR-1に気づかなかったのが、イングラムの犯した最大のミスであったからだ


だがリュウセイには、その時のことがよく思い出せるはずも無い
辛うじて繋がっていた記憶は、あの時リュウセイが彼を完膚無きまでに打ちのめしたこと
それがただただ、悲しくて辛かったような、そんな感情だけが残っている
『俺のことなら気にするな。どうであれ、俺が死ぬことがないのは、覚えているだろう』
とはいえ、流石にリュウセイに肉体を葬り去られたのは、あまりに大きいダメージであった
それ故に、ある種リンクしているクォヴレーにまで、そのショックが余波として伝わってしまった
さらに、長時間再起不能に陥るほど、魂そのものがダメージを受けてしまい、力を発揮できず次元断層の狭間に墜ちた彼を捜すのに、クォヴレーは相当苦労する羽目になったのだ
『それより、後悔する気持ちが残っているなら、彼らの呼びかけに答えるんだな』
そう言われてみると確かに虚無の彼方から、リュウセイの名を呼ぶ沢山の声が聞こえるようだった
「・・・彼ら・・・誰・・・?」
声の主を思い出せない
何故彼らが、必死で自分を呼んでいるのか、判らない
『お前が捨てようとしてしまった、しがらみや因縁達・・・』
それが自身の意思であったか、それともケイサル・エフェスに取り憑かれていたため、行ってしまった所業なのかは、別として
『だが、お前を裏切り、奪いどおしだった俺が、唯一お前に与えられたもの』
そのために受けた辛い思いを、共に分かち合い支えてくれた者達
『彼らは待っている。お前が、お前としての役割に戻ってくることを』
「俺が?・・・役割・・・なんだった・・・っけ」
記憶の断片化が進み、自己を保つことが精一杯になっているリュウセイ
その彼の肩をイングラムは取った。そしてその腕を通して、アムロ達が作ったサイコフレームの橋が、刹那の支えているトランザムバーストの光が、全ての学園生徒達の思いを載せて舞い降りてくる

それは目が眩むほどほど輝いていたけれども、暖かく癒される波動を持っていた
その中に含まれていたもの
ロボット談義でじゃれあった甲児やノリコ、必殺技のことで相談し合った弁慶たち、自分が落ち込んだとき、支えてくれた鉄也や竜馬たち
そんなたわいもない思い出
これらが、たくさんたくさん光と共に流れ込んできた


涙が、止まらない
自分があんなに全てを壊していったのに、誰一人として自分を忘れてない
『これでも、彼らに応えないというのか?』
再度のイングラムの問いに、リュウセイは全力で首を振った
涙が流れれば流れるほど、その表情は徐々にしっかりとしたモノに戻り、バラバラになりかかっていた身体も姿を取り戻しつつあった
『なら、戻るぞ。俺の手を取れ』
「・・・了解っ!」
手応えを感じて、クォヴレーはディス・アストラナガンの腕を、ケイサル・エフェスから静かに引き摺り出していく
『なにっ・・・まさか!?』
驚いたのはケイサル・エフェスの方だった
あそこまで食い散らかされて、それでも彼はまた戻ってくる気なのだ
『バカな、この絶望の世界に、まだ敢えて戻ってこようというのか?居場所も役割も友も、全てが偽りと夢想のこの世界に!』
「・・・違う、偽りじゃ無い!この世界は、ただの夢じゃない!!」
ずるり、と音を立てて、ディス・アストラナガンの手を掴んだR-1が、その上半身をケイサル・エフェスから抜け出そうとしていた
「俺は・・・俺は、地球を護るSRXチームのパイロットで、スパロボの主人公の一人なんだ!!」
力強い、リュウセイの声が聞こえてきたことで、その空間に居残っていた者達は、驚きと安堵の念を一斉に持った
それがさらに、彼の心の後押しをしていた
「それに、みんながそこに、確かに居る!俺を待ってる、呼んでくれている!!」
この世界に生まれたからこそ得たもの
誰かが戯れに作ったかも知れない
その世界であったとしても、ここでの彼にとって唯一のもの
夢の舞台の中であるからこそ、獲得できたもの

「この役は・・・俺だけの特権だ!俺は・・・その役を果たすために、仲間のところに帰るんだぁぁぁッ!!」
R-1が、完全にケイサル・エフェスの躰から抜け出したのと同時に、クアンタのクアンタムバーストの力がケイサル・エフェスを逆に捕らえた
「ケイサル・エフェス!貴様は未来に怯えるから、過去を消そうとしているに過ぎない自らを分かれ!!」
確かに、未来は恐ろしい
何が起きるかは全く分からないし、例え予言書があったとしても、人はそれを変える力を持っているのだから
「だが、それが俺達を導く力となる。これこそが無限の可能性だ!!」
可能性こそが、新たな歴史を生み出す
しかし、ケイサル・エフェスの精神は、それを訴えかけるクアンタムバーストの力を、認めようとはしなかった
『そんなもの・・・そんな物が革命を起こすなど・・・我は、我は認めぬ・・・!』
その言葉を断末魔に、光に飲まれていくケイサル・エフェスと入れ替わるように、破壊される寸前であったOGS世界に、遠くから唄が響き渡ってくる
その唄が大きくなると、やがてクアンタムバーストの光から、ぽつりぽつりと消えていった者達が・・・オーラバトラーやバルキリーが姿を現しはじめた
「・・・綾人の唄か・・・」
R-1のコクピットに入り込み、リュウセイの無事を確認していたクォヴレーは、調律の唄が戻ってきたことで、世界の崩壊がどうにか止められたことを確認した
「クォヴレー・・・俺・・・」
どうにか意識は戻っていたものの、まだ立ち上がれるだけの力が戻らないリュウセイに、クォヴレーは無言で頷いて答えた。今はとにかく、落ち着けと
「いや、まだやらなければならないことがある」
そこに突然、量子化した刹那が、手に何かを持って割り込んできた
それは、νガンダムから放たれていた、サイコフレームの試料であった
「お前がやるべき償い・・・お前にしかできないことがある」
そう言うと刹那は、サイコフレームの試料をそっとリュウセイに持たせる
「お前が一番忘れてしまっているんだ。この世界のこと、関わった人たちのこと。だから、思い出さなくてはならない。この世界を愛し、お前を求め、共に未来を築こうとした、幾多のキャラクター達のことを」
そうして促されるままに、リュウセイがそれに想いを込めたとき、まるで間近で星が爆発したかのような光が溢れ出す
「フフ・・・どうやら、また死に損なったようだな」
その光の中で、サザビーに乗ったシャアはそう嘯いていた
「いや・・・そうじゃないさ」
同じように戻ってきたνガンダムのアムロは、光が渦を巻きはじめる光景を、面白そうに眺めながら、そう応えた
「今までだって俺達は、こうして何度だって変革を体験してきたじゃないか」
スパロボが歩んできた道は、決して平穏では無かった
変わろうとする意思と、それを恐れる心の葛藤は、今に始まったことでは無い
「これからも、俺達はスパロボの歴史が続く限り・・・いつか、全ての人々が、俺達の存在を忘れるその日まで、何度だって・・・
パンドラが開けた箱からは、あらゆる悪が放たれた
だけれども、最後に残っていた物がある

「希望に・・・希望に溢れた、未来へ・・・」
そうして、溢れた光がOGS世界全てを飲み込み、消えた
目の前にある巨大な学園の光景を、4人の若者達が見上げていた
「ふ~ん・・・ここが噂の、私立スパロボ学園、ねぇ」
なんかすごいところに来ちゃったかも?と言うように、少し茶化した顔でティエリアを見やるロックオン
「これからここで、新しい任務として、我々は潜入捜査を遂行する」
ティエリアにとっては、その辺はどうでもいいことらしく、真新しい様子の校舎に興味を示す素振りも無い
「それはいいんだけど・・・人革連とかの方はいいの?」
ヴェーダの作戦プランなら文句は無いが、さりとて本業を放っておいてここに潜入するのは、どういう意味があるんだろうと、アレルヤが思うのも無理は無い
「俺達は課せられた任務を果たすだけだ。戦争根絶のために・・・!」
そう言って校門に歩みを進めた刹那(16歳)は、そこにまるで自分を待っていたかのように、一人の少年が立っていることに気づいた
自分より年は下のような、だが強い意志と冷静な心を思わせる表情の、その彼の姿に刹那は少し心が動いたが、さりとてかける言葉があるはずも無く、やや戸惑っているところへ、その少年の方から刹那に近づいてきた
「ようこそ、スパロボ学園へ」
彼はそう言うと、すっと手を刹那に差し出した
返す手でその掌を握った刹那に、彼は優しく微笑みながら、こう言った
「そして・・・おかえり

新しいスパロボの物語が始まろうとしている
そのために古い衣を糧に、新しい歴史に向かって学園も歩もうとしている
まだ見ぬ仲間達を待ちながら
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2011/04/03 23:29 | リュウセイ 暴走編COMMENT(6)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

そっか・・・もうすぐ始まるんですよね。「また」

今回のスパロボ学園のエンディングも凄く感動的でした。
私のつたない言葉では上手く表現できませんが、
・どうなるか分からない「未来」にどう向き合うか
・時間が経ったり形が変わったりしても誰かが「思い出」として覚えている限り「消えることはない」んだ
と言うことがテーマだったのかな?と思いました。

ところで、ジュドーに対して
『自らの生の終わりに於いて、人類に絶望したお前が言うか』
って何の話ですか?「あの」ジュドーがそんな風に思うなんて何があったんですか?それともジュドー→逆襲のギガンティス→イデ→コスモでジュドーじゃなくてコスモが「そう」だったってことですか?(よく分からないので凄く引っかかりました)

そしていよいよ第二次Zまで10日となりました。
もうすぐ始まるんですよね「また」。
このままいくとチェンゲの若手チームは後半からっぽく、ちょっと寂しいですが、新しい「設定」と「繋がり」楽しみにしたいです。

スパロボ学園完結ありがとうございます!!
新作も楽しみに待たせてください!!!!

No:2659 2011/04/04 05:56 | 壱華 #- URL [ 編集 ]

ちょっち予想外のラストだっただった

(こっちの)ヒイロ「サイコフレームその他諸々によって、修復された……まあそれはいい」(調律の歌が響いた後自力で脱出
クォヴレー「お、おい………」(滝汗
ヒイロ「だが、00の世界の時間軸までリセットされるとは思ってなかったぞ!?あの時の俺の苦労をどうしてくれる!」(ぴきぴき
クォヴレー「落ち着け……」
ヒイロ「だがッ!」
クォヴレー「……一度…落ち着こうか?」(ディストラに攻撃指示
ヒイロ「…………」(滝汗
クォヴレー「……と言うわけで、こっちのオーナーが抱いたのは以下の要素だな」



・00の世界にリセットがかかった
 →こっちのヒイロとそっちの刹那が互いに立てたフラグ…まさか消えた……?
・最後に刹那に挨拶したのって、もしや………(核地雷の気がするので以下省略)?

No:2660 2011/04/04 06:07 | 漆黒の翼@携帯 #e9EPk88s URL [ 編集 ]

    ご苦労さんでした

あるすさん、乙っす。
リュウセイ…色々言われてるけどなんだかんだ言ってみんなに愛されてますね。
このSSを見て、また彼が好きになれたような気がします。


    記憶に留まっている限りは……

どれだけの時が経とうと、人々から忘れられない限り、
そしてスパロボの記憶が次の世代へと受け継がれていく限り、スパロボは不滅だし、
スパロボで戦うみんなも未来へ向けて進むことができるんだと思います。
という訳であと10日、第2次Zを待ちたいと思います。



あるすさん、本当にお疲れ様でした。
そしてスパロボよ、永遠なれ。

No:2661 2011/04/04 10:38 | 青い朱雀 #- URL [ 編集 ]

Gじぇねラストスパート

ふう、第二次スパロボZに間に合って良かった

壱華さん>
テーマに関しては、ほぼご指摘通りです
伝わって良かったw
>ジュドーの件
長谷川裕一先生の、Vガンダム外伝という漫画がありまして
そこに出てくるとある人物が、ジュドーなんじゃ無いかと言われております
この人物は戦争ばかりの地球圏で、新しい世界を模索するよりも、外宇宙に出て全く違う世の中を造ろうと画策し、そして旅立っていくという内容なのです
ちなみにそれに半分巻き込まれたウッソは、それでも地球人は変わると信じる役柄です

漆黒の翼さん>
はっはっはっ、最後までネタを出さなかったのはこのせいさ!
>00の世界の時間軸までリセットされるとは思ってなかったぞ!?
第二次スパロボZが始まるというのに、既に映画版まで終わってちゃしゃれにならんでしょう
>最後に刹那に挨拶したのって、もしや
ええ、おそらく予想通りと思われます(爆

青い朱雀さん>
>記憶に留まっている限り
変な話、スパロボ全体が思い出の塊みたいなもんですからね
だからこそ、変に醜い争いも起きたりはするんですが
それが、今回のメインの筋でした

No:2663 2011/04/05 00:40 | あるす #- URL [ 編集 ]

終わり方に苦労する

アルト「その気持ちわかるなぁ……俺もTV版、劇場版、コミカライズ版×2があるからね……」

注意:コミカライズ版はキス.イン.ザ.ギャラクシーもカウントしてます。

シンジ「で、どれが一番楽ですか?」
アルト「劇場版(きっぱり)」


ランカ「アイ君、食べてもいいよ」


刹那「俺の場合は問題ないがせめてあのシーンは若き日のマリナ姫にするべきじゃないのか?」
マリナ「え?」
刹那「あんまりヒロイン成分が無いと彼女がかわいそうだ……」


一夏「平穏に終われる方だけいいもんだよ」
箒「そうだぞ!!!」

ラストシーンでキスしようとしたら他のヒロインに見つかってISで攻撃されました。


今週のIS

・後番組である“緋弾のアリア”とのコラボレーション企画で箒が東京武偵高の制服を着ている。

箒「それにしても東京武偵高の制服スカートって短いな……シャルロットって何時もこんな感じなのか」
アリア「銃のホルダーが太腿しか付けられないの」
宗介「……小学生が銃を持つ必要が」
アリア「私は高二よ!風穴あけるわよぉ!!!」←本当に小学生と同じ位の身長なんですが戦闘能力は宗介並。


No:2665 2011/04/06 00:45 | YF-19k(kyousuke) #vOF08ZPo URL [ 編集 ]

Re: タイトルなし

複数あるエンディングというのは、他にいろいろ(良くも悪くも)影響を与えるので厄介ですな
劇場版Zガンダムを容認すると、ΖΖガンダムが排除されるけど
機動戦士ガンダムUCのためには、ΖΖガンダムが必要という矛盾

> 刹那「俺の場合は問題ないがせめてあのシーンは若き日のマリナ姫にするべきじゃないのか?」
ELSと一体化して若返るというのはどうでしょうか
え、マリナはイノベイターじゃ無いから駄目?

No:2666 2011/04/07 01:35 | あるす #- URL [ 編集 ]

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