今更 漫画「イレブンソウル」を語る

昨日、フォロワーのM助さんから
「イレブンソウルの最終巻が出て1年近く経つのに、なんで感想書いてないの?」
と言うツッコミを受けまして・・・

端的には
「最後が面白くなくなったから」
なのですけど、じゃあ実際何が面白くなかったのか
どうして欲しかったのか
ってのを一応書いてみましょうか、という気持ちになったので、ここに短く記載することにした



イレブンソウル 15 (ブレイドコミックス)イレブンソウル 15 (ブレイドコミックス)
(2013/06/10)
戸土野 正内郎

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「イレブンソウル」は、面白くない作品か?
それは『否』と言わせて貰おう
特に7巻までの流れは、この手の「若者の戦争物」という面から考えても、非常に面白い内容である
また、戦闘のスピード感、重量感、剣道の「手」など様々な見地から見ても、迫力と緊張感がしっかりと画面に展開しており、キャラクタの練り込みもよくできていたのだ
シャヘルという異形の存在と、それらに軍人として淡々と、しかし熱を持って向かっていく主人公・たけちーの心の内と、意固地になりなんがらも、なんとか不器用な生き方で道を行く九十九の、それぞれの絡みも良くできている
だから、7巻までは是非読んでもらいたい

だが、これが第8巻以降、急激におかしな事になっていく
それらの元凶は作者が、『滝川奈々』という化け物に気づき、これに取り憑かれてしまったことによる

実際、5巻における伊藤隊長の死・・・この時点で、彼の反逆フラグは既に見えていた
というか、全人類から無用の悪意を向けられ、それと意識せずに弟を見殺しにしたこ、という二つの事柄から、心が死んでしまった彼が、最終的に救いの手を断ち切られたことで、シャヘル・ミスラを受け容れて、こちらに向かって刃を向けるのは、ごく当然の流れであり、侍所と日本政府が乗り越えるべき、業という壁であったと言える
と言うよりも、彼には第三勢力となり、人類の業とシャヘルの業の全てを断罪しようとする、愚かな救世主気取りの悪役にまで堕ちてくれても良かったと思う


シャヘルを生み出しつつ、それらを愛すこともなのもできなかった人類の業
その業を受けて、さらなる業を展開するシャヘル達
こう言った流れは8巻以降に語られる内容である
それらに絡んで、伊藤がシャヘルというものにどう翻弄されたか
そう言った物の結果として、何が起きたか
これらについては11巻までの中で語られ、その整合性は充分取れている

だがここに滝川が絡むと、一気に全てが駄目になってしまう
これらの物事が、滝川の手の内であっては、この「イレブンソウル」の根幹が崩れてしまう
彼女の登場のせいで
偽悪を貫いても未来を得たいと欲する首相たち
日本を勝たせるために、冷徹に冷酷に、しかし着実にどうにかしたい石川の決意
色々なものを背負いつつ、それでも淡々と戦い抜く乃木
これらの存在が、全く台無しものになっているのだ


滝川というキャラクター自体は、作者が非常に愛し重用し、ノリノリで描いているのがよく判る
しかし申し訳ない
彼女を登場させてはいけなかった、と私は思う
なぜなら、8巻から後の展開で、彼女の暗躍の部分をすっぱ抜くと、非常にスッキリサッパリ、分かりやすい内容になっているのだ

だいたい
門脇は伊藤に殺されてこそ、輝くキャラクターだったと思うし
さらに伊藤は、首相達に対してさえ、殺すまでは行かなくても、傷つけ糾弾するシーンさえ有っても良かったはずだ
そこに、円谷のある種の倒錯した愛と決意があって、初めて物語が成立する部分は多い

他には
石川の第7巻での決意は、じゃあどこへ行ってしまったんだとツッコみたいし
黒沢の叛乱の理由なんて全然意味不明


何故こんな残念なことになったのか
滝川というキャラクターが、もっと早い段階から登場し、器の無い虚無の存在として出ていれば、少しは状況が違っていただろう
それこそ前作『悪魔狩り』のガブリエルのように、そういうキャラクターとして物語を狂気に満たすのが滝川であれば、この話はそれでも良かった

しかし『イレブンソウル』の敵は、あくまでシャヘルという人工生命体であった、と私は思う
それを、つまり人の業の象徴を、誰がどんな考えで、それでもと言って倒しに向かうのか
それがカタルシスになるはずだったのでは、と期待していたのが、完全におかしくなってしまった

それ故に私は、感想を書けなくなってしまった
この展開を良しとする人も多いだろう
それはそれでいい
人の感性はそれぞれであるから、これを批判するつもりは毛頭無い
けれど、私は作者が、何処かで道を踏み外して、この作品が向かうべき本来の道を失い、迷走したように思え、残念で仕方ない

そういう意味で、まこと人の業とは罪深きもので有り
あらゆる人の納得する作品というのは稀少であり
求める者が交錯することが無く、失意をもたらすこともあるのだ

と言う言葉で記事のまとめとさせていただく
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テーマ : 漫画の感想 - ジャンル : アニメ・コミック

2014/07/19 17:26 | イレブンソウルCOMMENT(4)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

バイオテクノロジーの恐怖

この作品は安易なバイオテクノロジーの利用に警鐘を鳴らし、尚且つそれを利用する政府の方々の暗部を諸に出し、人間の脆さを痛感しました。伊藤隊長の悪堕ちで全てを物語ってます。


シャヘルはバジュラと並ぶ驚異の生命体ですよ……

No:4761 2014/07/19 18:01 | YF-19k(kyosuke) #vOF08ZPo URL [ 編集 ]

シャヘルのトップのあのヤザタさん

そういえばシャヘルのトップのヤザタさんの情報、
セレブレート達と会議する他に、過去シーンで暴走するきっかけと、
ミスラのセリフからどんな考えの持ち主なのか説明されるくらいですよね。
イレブンソウルだとヤザタさん本人のセリフからどんなキャラなのか分かる描写が少ないので、イレブンソウル2で活躍させる事を前提としたキャラですかね。

もし2の連載が実現されれば、
ヤザタさんとの決着のイメージはトドさんは既に考え済みだとして、
決戦前の燃えるシーンのお約束である、
敵の言い分を主人公が論破する門答も用意されてると思うので、
 要は、人の業の象徴であるシャヘルとの決着がついた時のカタルシスは
2でヤザタさんの情報がどれだけ判明するかどうかだと思います

No:4762 2014/07/19 19:44 | M助 #tfdyKnH6 URL編集 ]

トド先生、頼むよ

YF-19Kさん>
バイオテクノロジーの恐怖
確かにそうなのです
そうなのですから、ラスボスは滝川では駄目だったと思います
生み出したものを乗り越える
それもまた人間の英知であるという、そういう流れが欲しかった

M助さん>
ブログ初コメントありがとうございます
その続編ですが・・・あると思いますか?
私はイレブンソウルが、ラストを急がされた感があると思います
だとするなら、ブレイドは少なくとも、イレブンソウルを続かせる気は無いのでは無かろうかと
悪魔狩りみたいに、雑誌を移って続編が・・・ってことは・・・うーん

No:4764 2014/07/21 22:02 | あるす #- URL [ 編集 ]

初コメントしたのは

ブログに初コメントしたの、
この記事じゃなくて以前Gジェネの記事が初コメントですよー(汗)

>>ラストを急がされた感があると思います。
 そういえば、ブレイドが作家に描かせたい作風と
作家が描きたい作風が食い違った結果、
作家が他社に行った噂を思い出しました。
 単行本コメントでSF漫画はハイリスク、ローリターンな事書かれてあったので、この辺も大人(ブレイド)の事情で急がされた理由ですかね・・・・

詳しい事は分からないですが、
他のブレイド作家の方の単行本を見た人によると
作品の最終回をブレイドの何月号に指定するといった、
作家じゃなく編集が前々からスケジュール作ってる的な感じらしいですし

No:4770 2014/07/29 00:29 | M助 #- URL編集 ]

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