吸血遊戯(2)

やっと第2話
時間をかけていろいろ考えているウチに、どんどん話が壊れている(苦笑)

この手の操りとか洗脳とかのシチュってのは、ネット検索をかけても圧倒的に女性が対象だよね
まぁ、カワイい女の子を自分の好きなように弄びたい、っていう心理なんだろうけど、この手の話は男でも充分いけると思うのだけどなぁ~
(いやもちろん、題材と内容が面白ければの話ではあるが)
洗脳がよく出てくる戦隊モノなどの特撮全般は、男が主人公である事が圧倒的に多いから、ターゲットも必然的に男になりがち
誰か男使って本格的にこういう話創ってる人って居ないのかな?


暗い
とても暗いところに捕らわれている
暗いところは怖くない
だが、自分は拘束されている。"だから"ここには恐ろしい者たちがやってくる
また、あの忌まわしい儀式が、唾棄すべき行為が行われる
嫌だ
もう嫌だ
やめてくれ・・・!


「ミハエル!大丈夫ですか!?」
ナタリエの声でミハエルは目を覚ました
「どうしましたか。嫌な夢でも見ましたか」
「私は・・・眠っていたのか?今のが夢・・・」
牢獄では時間の経過が分からないが、捕らえられてから大体一晩が経ったようで、ミハエルは自然と眠ってしまっていたようだった。
「『夢』を見というのがこれのことなのか・・・?今までそう言うことがなかったから・・・」
彼は「夢を見る」というのはもっとふわふわしたものだと聞いていたが、妙に『生々しかった』印象が強く、答えに窮した。ナタリエが怪訝な顔をしてのぞき込んでいる
「それとも、幻覚かもしれませんね。ここには『陰』の気が充ち満ちていますから、何か悪影響を受けているのかも知れません」
そうだろうか・・・居心地は悪くない。別に変わった風にも感じない。ナタリエの言葉はやはりミハエルにはピンとこなかった
「わからない・・・ただ、漠然とこう、不安というか恐怖というか・・・何かを感じたのは確かだ」
「『奇跡の将』と歌われた貴方がこうして捕らえられてしまっているのです。不安を感じないはずがありましょうか」
ミハエルを気遣ってかナタリエは優しく声を掛けたけれど、やはり彼にはその言葉は響かなかった
なんだろう、何かが『違う』。確かに自分の今までの記憶にこんな失敗は無いけれど、それだけでこんな気持ちになる物なのだろうか
思えばこんなにいろいろ考えることは今まであったろうか
毎度休む間もなく戦場を駆けずり回っているし、平時は訓練と司祭の説法に終始耳を傾けていて、深く考えるという事からは久しく縁遠かった

と、遠くからカツカツと靴音が響いてきて牢の外に人影が現れた。"伯爵"だった
「少しはオヤスミになられましたかな?」
またするっと牢を"通り抜けて"、"伯爵"は二人の側に近づいた
「貴方に気を遣われるいわれはないわ」
「気の強い女性は嫌いではありませんが、何もかもにトゲトゲするのもどうかと思いますよ・・・さて」
憮然としてるナタリエから目をそらし、"伯爵"はミハエルの方に向き直った
「今お話をしたいのは、こちらの騎士様の方なのですよ」
"伯爵"は身をかがめてミハエルの顔をのぞき込んだ。といっても"伯爵"の顔はフードで隠れていて、ミハエルは彼の表情をうかがい知ることはできなかったが
「『奇跡の将』ミハエル殿・・・数々の輝かしい功績によって、教会・・・いや人間社会における希望とも言うべき人物・・・良く存じ上げておりますよ」
「伝説の存在であるヴァンパイア殿に名を知られているとは、また光栄なことだ」
ミハエルの皮肉めいた台詞を聞いても、"伯爵"からはなんの感情の動きも読み取れなかった
「・・・まぁそんな貴方ですが・・・実は"お疲れ"ではありませんか?」
「は?」
ミハエルもナタリエも、突然の質問に思わず声を上げた
「貴方はご存じないだろうが、私は教会のことをずっとずっと見てきました。もちろん貴方のこともね。いつもいつも"何の変わりもなく"任務をこなすそのお姿には感服するが、なぜにそう"いつも平然と"していられるのでしょうね?」
「貴公の言っていることがよく分からないが・・・任務をこなすことは私の仕事そのものだ。何の問題があるだろうか」
「そうですか?私にはそうは見えない」
"伯爵"の体はさらにずずっとミハエルににじりよった
「人間の信ずる神への服従、任務の完全遂行、危険な地への出向・・・これらのことに何のストレスも感じずに生きていけるというのですか?」
「『人外』が何を言うか!」
ナタリエが叫ぶ
「闇に生き、光を食らいつくすお前達と、私たちは違う!!」
「おだまりなさい!」
そう"伯爵"がキツイ口調で制止すると、ナタリエの体は意に反してほとんど動けなくなってしまった
言霊による一時的な麻痺を起こす魔法だった。この手の「意志のみで魔術効果」を発揮できるモノは早々おらず、"伯爵"の力の強さを伺わせた
ナタリエを黙らせたのを確認すると、"伯爵"は改めてミハエルの方に向き直った
「さて、どうですか騎士殿?」
「・・・分からないな、急に言われても・・・考えたこともない・・・」
ミハエルは本当に困惑していた。そう、今の今まで、『疲れる』だとか『何故』だとかそんなことを考えたこともないのが事実だった
「考えるつもりもない、というわけですね。まぁそれで、今まで貴方が"楽"だったのなら構わないのですが」
「質問を質問で返すが、貴公こそ何故そのようなことを私に聞くのだ」
「少し"思い当たる節"がありましてね・・・まだ確証を得ていないのですが。その確認のためです。いずれおわかりになることでしょう」
そこで言葉を切ると"伯爵"は昨日同様、すぅっと牢獄の外に消えてしまった


ああ・・・
いつまで"ここ"に居なければならないのか
いつまで"こう"でなければならないのか
このままではダメだ
抜けだそう、抜け出すんだ
力を・・・力・・・


「また、うなされていましたね・・・」
ナタリエが心配そうにのぞき込んでいるのに気づき、ミハエルは多少朦朧としながら起き上がった
「・・・なんだかすっきりとしなくて・・・」
今まで感じたことのない体の重さに、ミハエルは困惑していた
「もしかしたら、司教様の『お薬』をいただいていないせいかもしれませんね」
ミハエルは毎日最後の"お祈り"が終わった後、必ず司教から薬を授かるのが習慣だった
出生の経緯を彼自身はよく知らないが、医学では治せない"持病"を押さえるためだと聞かされていた
こんな風に捕らわれたことが無かった彼であるから、薬を欠かすと言うこと自体始めてのことで、確かにそれはあるのかも知れないと思った
不思議だ。今まで"失敗"らしいことをしてこなかったから、逆にこういう時間が無かった
一体今回は何が悪かったのだろう。事前にちゃんと計画もしていたし、装備もできる限り揃えた。たしかにヴァンパイアは不測の事態ではあったけれど、乗り越えられない敵では無かったのではないか
「昨日から・・・いろいろ考えたのも久しぶりだから、頭が疲れたかな・・・」
そう言ってミハエルは頭を抱える
「あまり悩んではいけません。ミハエルはただ、神のご威光を民に知らしめるために力を使うことに集中していれば良いのです」
「・・・」
ナタリエはそう言ってミハエルに考えることを止めるように諭してきた
「それは・・・そうなの・・・だけど・・・」
あまりにキツく言われたので、さすがのミハエルも驚いて言葉を詰まらせた
ナタリエはいつもこんな感じだっただろうか?
「さて、他に辛く感じるところはありませんか?」
ナタリエはまるでミハエルの様子をチェックしているような口ぶりであった
毎日彼女と会話をしているはずなのだが、こんな風なやりとりは"始めて"だったので、ミハエルは微妙な違和感を拭いきれない。しかし彼女の質問には答えねばならない・・・
「・・・喉が・・・渇いた・・・」
ミハエルが少し間をおいてそう答えた。彼はただ正直に答えただけだったが、ナタリエは少しこわばった顔をして身を引いた
「・・・どう・・・した?」
「いえ・・・その・・・」

と、ふに二人の間に黒い闇の塊が現れ、みるみる人の形を成して立ちはだかった
「今日はまた突然のお出ましだね、"伯爵"殿・・・」
"伯爵"の雰囲気は明らかに昨日と違っていた。何か強い意志のようなモノを感じる
「最後の"確証"を得るための"儀式"の準備が整ったので、お二人にご協力いただきたい」
「馬鹿な!何故私たちがそんなものに協力しなければならない!」
「あなた方に選択の余地は無い」
叫んだナタリエを押さえつけるように、"伯爵"は低いが力強い声で言った
そして牢の扉が開いて、人形にされた者たちがぞろぞろと入ってきて、二人の両手を戒めている鎖の端をものすごい勢いで引っ張った。二人は抵抗するが、意志無き者達の力はすさまじく、なすがままに牢から引きずり出されて広間らしきところに連れ出されてしまった
そこは彼らには解読不能な文字で魔法陣らしきものが床に描かれていて、不気味な光を放っていた
呆然としているミハエルの横で、ナタリエだけが"伯爵"に魔法陣の中央に連れて行かれ、見えない鎖で宙に吊された
「私をどうするつもり!?」
完全に自由を奪われた形となったナタリエは、"伯爵"を睨み付けた
「別に血を吸ったりはしませんよ。儀式の対象は貴方ではないですからね・・・」
"伯爵"はそう言うと踵を返してミハエルの近くに戻ってきた
「儀式と言ったが、一体何を企んでいる?」
「貴方を楽にして差し上げようと言うのです」
そう言って"伯爵"はミハエルに部屋の隅を見るよう促した
そこにはまた別の光が見えた。先日外した彼の鎧が無造作に積まれていたのだ
「・・・まったくおぞましい。"さすがに貴方でも"あんなものを着けていたら、思考停止に陥っても仕方ありませんね」
"伯爵"が吐き捨てるように言った。ミハエルはなんのことだかわからず、困惑しながら鎧を手にしようとして近づいたが、何故か途中で足が先に進まなくなった。鎖のせいではない。どう頑張ってもその『鎧』に近づくことが躊躇われた。頑張ろうとすればするほど汗がにじみ、吐き気と嫌悪感を覚える
「い、一体どうしたのだ私は・・・?」
「よく鎧をご覧なさい」
言われてミハエルが目をやると、鎧の裏側にびっしりと教会が使う呪文が刻まれているのが見えた。それはいろいろな内容であるけれども、ほとんどが服従を強要する内容であった
「なん・・・だ?これは?」
こういう呪文を施される相手と言えば、教会が倒すのも封印するのも手を焼くような凶悪犯である
どうしてこんなものが、自分の鎧に刻まれているのか?ミハエルは混乱した
「そんなものに惑わされてはいけません、ミハエル!"伯爵"の陰謀に違いありません!!」
背後からナタリエの必死の叫び声が聞こえた
「おや、ナタリエ殿。私がこういった神聖呪文を使えるとお思いで?」
その通りで、神の威光を盾に服従を迫る呪文など、『陰』に生きるヴァンパイアには元々縁がない
ミハエルは"考えた"。今まで教会のために身を粉にしてきた自分に落ち度があったというのか?ここまでされる理由などあるのか?
・・・いや、ある
彼は急に"そう思った"
まだハッキリした"理由"は"思い出せない"が、これは確かに教会にとっては・・・必然だ
「いい加減にろ"人外"め!これ以上神に仕える戦士を惑わすことは許さない!私たちは選ばれた者たちだ、お前達のような神の恩恵から見放されている連中がこれ以上・・・!!」
口汚く叫ぶナタリエをの口元を"伯爵"が塞いだ
「いい加減になさい、ナタリエ殿。その人間が創った神とやらの名を出せば、何をしても良いとでもお思いなのかな?」
そうして"伯爵"は空いているもう片方の手から刃物を覗かせ、ナタリエのサーコートを切り裂き、はだけた胸元を少し傷つけた。切り傷から血が滲んで、やがて雪のような肌を伝って床に血の雫が落ちていく
彼女の表情は屈辱と怒りで満ちている
ミハエルはその情景をただ呆然と眺めているだけだった

選ばれたもの?
よくわからない。なぜそんな言葉が出てくるのか
何を言う、自分だってついさっきまでそう思っていたのではないか
そうだ、そうだけど
じゃぁあの呪文は、あの鎧は何だ。この違和感は何だ
・・・逃げなければ、こんなところは、嫌だ


確かに"逃げ出したかった"。けれどそれは、ナタリエが傷ついているからでも、"伯爵"が許せないのでもなかった。今までの記憶、自分自身の置かれた状況、それらが足下から徐々に水に浸食されるように崩れてきていたからだった。それも、浸食される大地の方に居たいのか、押し寄せてくる水に飛び込みたいのかもわからない。それくらい混乱していた
"伯爵"はそれを見透かすように彼に話しかけてきた
「どうです、ミハエル殿。楽になりたいでしょう?」
その声は、押し寄せてくる"水"の方からだった
「渇いた喉を潤したいでしょう?」
さらに声が囁きかけてくる
「ここなら誰も邪魔はしませんよ。楽になっていいのです」
ミハエルはふらりと立ち上がった
ああ、楽になりたい・・・どうしたら・・・楽になれる?
「どうぞこちらに。ここにくれば、楽になれますよ」
"伯爵"がそう言うと、ミハエルの手を戒めていた鎖がふっと消えた。それに気づいているのかいないのか、ミハエルはゆらりとゆらりとゆっくり魔法陣に足を踏み入れていった
その様子を満足げに見ていた"伯爵"は、ミハエルをナタリエの前まで誘導して立たせる
ナタリエが必死にもがくが、ミハエルの目は光を失って朦朧としていた。混乱した状況のために判断力が鈍っているようだった
"伯爵"はにやりと笑うと、ミハエルの首元にナイフを突き立てた
「今まで"神"を盾に行ってきた所行を精算してもらいましょう」

続く
スポンサーサイト

テーマ : 創作オリジナル - ジャンル : アニメ・コミック

2006/06/25 01:09 | 創作小説-1COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

 | BLOG TOP |