【スパロボ妄想】スパロボA the After【前編】

このSSは、以前書いた『スパロボAP打ち上げ飲み会』の続きです
※参考リンク
前編 中編 後編

これ↑を書き終わった時、読者の飛白さんから「続きを希望」と仰っていただいていました
実はその段階で、これから載せるストーリーは大枠ができてましたが、細かい所で迷いがあり、そのまま数ヶ月放置プレイ

そしてこの正月に酒を煽った勢いで、一気に全部が完成しましたので公開します
内容はシリアスですが、ベースが『劇ナデ』と『スパロボMX』なので、流れは読みやすいでしょう
(もちろん詳細は違うので、原作好きな人ゴメンナサイ)

尚これを書き上げるに当たり、読者のワイルドヘヴンさんに多大なご協力をいただきました
この場を借りて御礼申し上げます


とあるコロニーの競技場は熱気に包まれていた
「お疲れ様でございますです、隊長」
「・・・隊長は止めろと言った」
顔を覆っているマスクを暑苦しそうに取りながら、アクセルはラミアが用意したタオルを手に取る
「しかし試合は終わったのでありますから、隊長はリングネーム“ダンケル”さんではなかったりしちゃうんです」
「俺がいつこのネオ・ドイツの隊長になった?」
「最近じゃすっかりオーナーさんから、チームを任されてるじゃありませんですのこと」
最初はあの戦いの後に傷ついた、ラー・カイラムとナデシコを修理する金を稼ぐ、というのが目的のはずだったこの“コロニー格闘技”への参加も、今となってはアクセルの生活手段となりつつあった
それというのも、チームをまとめ上げる手段といいリングの盛り上げ方といい、下手なファイター顔負けなのである。マネージャーとして付き添うラミアの、(Wシリーズならではの)異常なまでに完璧な経理能力も一役買っていた
彼は認めないかも知れないが、実際の所戦っていることが楽しくもあった
「おや隊長、右肘に痣が」
珍しくアクセルが体に傷を付けてきたのが、ラミアには驚きだったのだろう
「ん・・・ああ、ドモンのヤツが俺の舞朱雀をカウンターしやがった時、受け止めきれなかったアレか」
今日の相手は、最も相手にしたくないドモン・カッシュだった。いや、シャッフル同盟の連中は全員やりにくさは一級品だが、ドモンは一際ヤバい
「まったく、そのまま石破天驚拳を撃ち込んでくるとは、奴は俺を殺す気か?」
「あの男はいつでも真剣ですから」
と言ってもコロニー格闘技では、コクピットへの攻撃は禁止されているから、実際死ぬってことは無い。しかし心臓に悪いのは間違いない
ふと時計を見上げる。深夜までもつれ込んだ試合のせいか、すでに時計が0時を回っていた
「与太話はこのくらいにするか。地球行きのチケットは、取ってあるな?」
「へい、ばっちりであります」
「明日は大事な日だ、寝過ごすわけにはいかん。もう休むぞ」


地球某所
ただ墓石だけが並んでいるその場所に、大勢の人間が集まっていた
その顔ぶれを見れば、知っている人間にはすぐ判る・・・かのロンド・ベル隊を形成していた主要メンバーが、喪服に身を包んで一つの墓石の前に佇んでいる
そこに添えられた数々の花やお菓子の数が、埋葬された人の人望を物語っている
彼らの前に立っているのは、背も伸び大人びた外見になったルリであった
「皆さん・・・今日は集まっていただいて、ありがとうございました」
ぺこりとお辞儀をする彼女を、集まったメンバーは沈痛な面持ちで見つめていた。むろんアクセルもである。ラミアは何を考えているのか良く判らない表情なのは相変わらずだが、人間らしい感情を知った今の彼女なら、ルリの胸中を多少察することも出来るだろう
今日は、テンカワ・アキトとミスマル・ユリカの命日であった
3年ほど前のこと
あの戦争が終わってからしばらくして、それぞれの道を歩み始めた元ロンド・ベル隊の中で、アキトとユリカは喧々囂々の末にゴールインし、ルリを養女として引き取った。彼らは幸せな家庭を築くはずであった。だが、新婚旅行の出先でシャトルが不慮の事故に遭い、アキトとユリカは帰らぬ人となった

「・・・まだ信じられんな、あの二人が死んだなどと」
墓地の近くのカフェで万丈と茶をすするアクセルがぼそりとつぶやいた
「僕も同意見だよ。天真爛漫なミスマル艦長なら、今にもこの場に現れそうな感じなんだけどね」
「ハイ、むしろテンカワ・アキトを腕に抱いて、飛び跳ねて出てきそうな感じでございますです」
あの日々が遠く感じられる三人
事故の衝撃はルリの心にあまりにも深い影を落としたし、かつての仲間達もヒドくショックを受けた
一時はバトルチームにボルテスチーム、甲児や大介達までが遠い異星から戻ってきて、代わる代わるルリの周囲に寄り添う日々が続いた
もちろん今ではああして立ち直った姿を見せてはいるものの、押し隠して居るであろう悲しみを思うに付け、胸が締め付けられる思いに駆られる
再び茶をすすり合う彼らは、ただ外をぼんやりと眺めている
「で、こんな日になんなんだけど。この後顔を貸してくれるかい?」
「フン、貴様が俺たちを茶に誘った時点で何かあるとは思っていたが・・・」
「いかがなご用でございますでしょ?」
「新しい仕事」
万丈はいたずらっぽく笑って応えた
連邦軍の極東支部の一室で、ブライトとクワトロが二人を待っていた
「出向いて貰ってすまんな」
握手を求めるブライトに応えるアクセルだが、違和感を感じて周囲を軽く見渡す
「・・・アムロ・レイはどうした?」
「ラー・カイラムを空にする訳にはいかん。今回は留守番を頼んだ」
クワトロの応えに、アクセルはなるほどと返した
「最近噂の、木連の残党とおぼしき連中への対応、だったりしちゃいますの?」
戦争終了後、太陽系をボソンジャンプの応用技術でつなごう、という『ヒサゴプラン』が提出された。予算の関係で手を付けられたのは2年ほど前になるが、実はその計画は遅々と進んでいない。それの主たる原因が、それらの関係施設を狙って頻繁に繰り返されるテロであった。未だ収まらない木連残党関係者が犯人だろう、と言うのが大方の見方であった
「まぁそんなところだ。そして君らを呼び出したのも、それに関わる」
万丈がスイッチを押すと、ブリーフィング用のスクリーンに真っ暗な宇宙空間を撮影した映像が投影される。が、その中心部に何か居ると言うことは、アクセルもラミアもすぐに気づいた
「漆黒の・・・機動兵器、か?」
ご名答、と万丈がまたもにやりと笑う。黒って言っても、デュオのデスサイズじゃないよ、と付け加えつつ
「この機動兵器らしき物は、すでにそれなりに前から報告があった。が2週間ほど前、ヒサゴプラン関係のコロニー海域で、木連残党とおぼしき一団と小競り合いがあった。そのとき乱入してきたこれを、百式のカメラが上手いこと撮影していてな」
「モビルスーツ・・・またはメタルアーマーで?」
機動兵器だと言うことは判っても、それを構成している基礎フレームが見分けられないため、ラミアであってもその正体ははかりかねた
「おそらく違う。私が確認しただけでも、ディストーションフィールドによる防御、そしてボソンジャンプとおぼしき跳躍を確認している」
「ということは・・・エステバリス、か」
木連残党相手に立ち回っていることから考えると、その線が妥当そうだった。もちろん、和平派と戦争継続派が未だに啀み合っているため、内乱という戦も考えられなくもないが、クワトロはその線は薄いと読んでいるようだった
「この件についてネルガルに問い合わせてみたが、知らぬ存ぜぬの一点張りでな」
そもそもの木連がらみの件からしてその対応だったから、当然と言えば当然の返答だった
しかも、件の戦争が終わった後に明らかになった事実で、アナハイムもネルガルも相当まずい立場に立たされてしまい、アカツキなどは連絡も付かない状態になっていた
「・・・と言いたい所なのだが、珍しく彼らなりの対応をしよう、と言うことになってね」
続いて映し出される、無重力ドッグに係留されている純白の戦艦
「ナデシコ、か?」
「そう、ナデシコBという試作運用のために用意された戦艦だそうだ。今回の事態のために、ネルガルから連邦軍に“納品”された」
要するに、なにやら妙なことが起こっているそうですから、ウチも無い手を尽くして事情を解明してみましょう、と言うネルガルなりの誠意らしい
「だがこのような事態なので、軍事行動に巻き込まれることも想定される。しかし何せ軍縮の時代でな、うちから護衛を回すことができん」
「で、フリーの私たちにお声がかかったわけでござんすね」
リョーコ達をはじめとする、元ナデシコのエステバリス隊は、解体されて久しい
ネルガルの風当たりが強くなったことを受けて、彼女らは三者三様に居場所を見つけて旅立っていった。つまり、今のナデシコには戦闘部隊が皆無と言うことである
そこでアクセルとラミアを“傭兵”として雇い入れる、という案が持ち上がったのだろう
「ソウルゲインとアンジュルグを持ち出す許可は私で取ってある」
「俺たちが断ることは想定外か」
ちゃっかりお膳立てをしていたクワトロに、アクセルは軽く嫌味を言ってみる
「昨日のファイト、一見してドモンくんに押されていたのが判った・・・命のかからないファイトでは物足りず、腐っていたのではないのか?」
「・・・嫌なこと言い当てるねぇ、赤い彗星」
「私も同じ理由で、嫁さんを未だにもらえんからな」
生い立ちも経歴も全く違う二人だが、命の削り合いにこそ生を見いだすという意味では、よく似ているのかも知れない
「が、そもそも君らに断る理由はない、ということでもある」
クワトロが言うのと同時に、黒い機動兵器を映していたスライドが切り替わった。そこに移っていたモノを見たアクセルとラミアは、驚愕して思わず声を失った
「ゲシュペンスト・・・!」
そこには間違いなく、3機のゲシュペンストが連邦の機体と交戦している様が、ハッキリと写し取られていた
「半年ほど前から、木連残党と同時に目撃されている。何度も照合したが、外見だけではない。正真正銘、あのゲンシュペンストMk-IIだ」
「相当の兵士が乗っていると予想される。現に3ヶ月ほど前に交戦した時は、オーキスを中破させられた」
「ウラキ少尉は?」
「重傷と言うほどでは無いがな・・・」
しばしの沈黙の後、口を開いたのはラミアだった
「これがシャドウミラーの生き残りであるとするなら、レモン様・・・が一枚噛んでいるということでありましょう」
二人がシャドウミラーを足抜けした当時でさえ、通常の“人間”のメンバーはほとんど残っていなかった。あと彼らが頼りに出来たのは、ラミアと同じWシリーズ・・・つまり人造人間達・・・である。それらを作成、調整、管理できる者はヴィンデルではなく、レモンその人しか居ない
(レモン・・・生きていたか?)
最後の戦いの時、レモンのヴァイスセイバーは、自爆した二機の閃光に包まれて消えた。その後は欠片も発見されていない。空間をねじ曲げるほどの爆破の、目と鼻の先にいたその機体が無事であるとは、アクセルでさえ考えつかなかった
それが何かの偶然が働いて生き残り、おそらくは木連残党に混じって行動していると言うことだろう
あれでは生きていないだろう、と安易に納得してしまったのがまずかったか
アクセルは自嘲気味に笑うしかなかった
一方でラミアの方も、あのとき“決別”して吹っ切れたはずの自分の中に、何とも表現しがたい複雑な“何か”が現れているのを感じ、困惑していたのだった
「このゲシュペンストだが、ある程度の“跳躍”のような動きも見せる。例の空間転移なのか、ボーズ粒子反応は未確認だ。また、あの転移装置を作っているのかも知れん」
ブライトの読みが当たっているなら、尚更事態は深刻である。確かに、自分たちに拒否という言葉を発する余裕も権利も有りはしないようだ
「事態は理解した。出るしか無かろうな、こうなれば」
「しかし、私たちのような癖の強いキャラクター、使いこなせるんでございましょうか、この艦の艦長さん」
「その辺りはご安心下さい。艦長は私ですから」
声がした方を振り返ると、すでに喪服から私服に着替えたルリが立っていた
「それ以上に、一緒に行動する人の方が一癖も二癖もあるので、お二人が参らないか心配です」
「私たち以外にも、ナデシコBに搭乗するお人が居るんでございますですか」
「ハイ、その方の“エスコート”もお仕事です。よろしくお願いします」
「それって楽しみにしてイイの、ルリリン?」
この娘もずいぶん自分の意見をすっぱり言うようになったものだ、とアクセルは経過した5年を走馬燈のように思い起こしてしまった
「ちなみに、お目付役として僕も一緒に乗るから、よろしくね」
にやりと笑ってラミアにウィンクしてみせる万丈
お目付と言っても、彼が監視などするはずはない。連邦内部に財務で影響力を持つ破嵐財閥の当主が搭乗することで、余計な手出しは無用と暗に言い聞かせるためなのだ
「ナデシコへの搭乗手続きなどは月のネルガルドッグで頼む」
「ブライト艦長達はご一緒じゃないんでございましょ?」
「ラー・カイラムとのランデブー時間がそちらとずれているのでな、名残惜しいがここでお別れだ」
「我々は独自に木連残党は追う。君たちはあくまで、ヒサゴプランの進捗状況の調査、を主体に考えてくれればいい」
ブライトの言葉を聞き終えたナデシコ一行は、その後の打ち合わせはシャトルの中で行おうということになり、部屋を後にしていった
残された二人は、しばらく顔を合わせずに宙を見つめていたが、ブライトが口火を切った
「・・・良かったのか、あれで」
「状況が状況だ、情報は最低限に押さえるべきだろう・・・それに、裏が取れていないことがまだある」
「その“裏”についてだがな」
「何か判ったか」
ここで初めてクワトロはブライトの方に向き直った
「・・・から連絡があった。ほぼ確定の情報らしい」
「接触予定は?」
「一週間とかからんだろう」
「そう言う意味では、我々も早めに宇宙に上がるか。バニング大尉達と意見を合わせねばならん」
二人は頷き合うと、立ち上がって部屋を後にした
ナデシコBに搬入される愛機を見上げるアクセルとラミア。二人の間にはちょこんとルリが立っている
「これまたずいぶん立派に完成された“試作型”だな」
初代のナデシコと同じ、グラビティブラストの砲門はしっかり付いてるし、相転移エンジンもご健在のようだし、一体何の試作運用のつもりの代物なのだろう
「一応、ワンマンオペレーションシステムの、実験データ収集が主目的なんです」
アクセルの思考を読み取ったようにルリが応える
それは、ネルガルの提唱する“一人で運用できる戦艦”という、究極の運用兵器理論だ
「それでは、ぶっきらぼうの隊長と適度なツッコミの出来ない私と、大人の女性が居ないと少しも歯車の回らない破嵐万丈だけが主要住人ですか。またずいぶんお寂しい雰囲気になるんじゃないでございますですか」
ぶっちゃけたことをいきなり言うラミア。とりあえず白虎咬を喰らわしておこうかと思ったアクセルであったが・・・
「おっ、艦長。おっかえり」
艦の近くで緑のエステバリスを整備していた男が、彼らの姿に気づいて近づいてきた。どこかで聞いたような声だとアクセルは思ったが、どこでのことかてんで思い出せない
「サブロウタさん、先に来ていたんですね」
「サブロウタ?・・・高杉三郎太か、木連の?」
「“元”だよ、赤毛の色男さん」
髪を黄色と赤に染め、肩まで延ばしているその男は、とてもあの堅物集団・木連のメンバーとは思えぬ外見であったが、確かに言われてみればサブロウタである
木連の軍人の内、和平に賛成したメンバーは地球に渡ってきており、その大半は連邦軍に統合されたと言う話だったので、彼が居ること自体は不思議ではない(ブライトの言う“軍縮”とは、彼らを受け入れる枠を作るために、連邦側を縮小したことを言っている)
「“元”上司の言いつけでね、ホシノ艦長のボディガードをつい最近までさせて貰ってた」
この喋りやスタイルは、そのときに地球でも違和感を出さないように付けた役が、そのまま地になってしまった物らしい
「んじゃ、改めて自己紹介ね。タカスギ・サブロウタ。一応今は連邦の大尉待遇だけど、今回は特別って事でナデシコBの副長をすることになってる」
何がどう特別なのか良く判らないが、そいうことらしい
『この不可解な配置を見るに付け、いかに今回のことが面倒くさいことか、想像が付きますですね、隊長』
『・・・黙っとけ。そんなことは最初から承知だ』
本来、コロニー格闘技で覆面ファイターをしていればいいはずの、厄介者の自分たちが引っ張り出された時点で、もう何もかもが“おかしい”のだ
「アクセル・アルマー。詳しい説明は不要だろう。この艦の護衛隊長をやらせて貰う」
「ラミア・ラヴレス。アクセル隊長のツッコミ役でござりますです」
「“お目付役”の破嵐万丈だ。といっても、居るだけだから安心して欲しい」
「散々“痛い目”に遭わされたからね、あんたらの実力は判ってる。頼りになる人が来てくれて大助かりさ」
よく言う、それはこっちも同じだ、とアクセルは苦笑いをして応える
「しかし副長と言ったが、エステバリスを持ち込んでいるのはどういう事だ」
「見ての通り。有事の際はアンタの下でドンパチやるって筋書き」
「副長が戦場に出るんでございますか。いくら一人で運用するのがテストと言っても、ホシノ艦長が大変じゃないですかのこと?」
「その辺はちゃんとからくりがあるのよ。じゃ、その説明のために艦にご案内しましょ」
そう言われて案内された艦橋では、一人の少年がコンソールの前に座っていた
「あっ、艦長。お帰りなさい」
「ハーリーくん、お留守番ご苦労様」
ハーリーと呼ばれた少年は、嬉しそうにルリに近づくと、後ろに立っていたアクセル達を見て、少しわざとらしく敬礼して見せた
「初めまして!マキビ・ハリ少尉、ナデシコのオペレーターです。アクセルさん、ラミアさん、破嵐万丈さんですね?よろしくお願いします!!」
なるほど、この少年が居ることで、テストデータの採取はそれなりに保たれる、と言うことか・・・それにしても
「ハーリーくんでいいのかな?・・・キミ、いくつだい?」
「はい?11歳です
万丈の質問にあっけらかんと答えるハーリー
『・・・ルリリンの時もそうだけど、何でこんな子供が戦艦を任されるんだ?』
『ネルガルの関係者に、ロリコンかショタコンが居るんでございましょうか』
『まさか?クワトロ大尉じゃ有るまいし』
「遺伝子調整の関係ですよ。変な勘ぐりしないで下さい」
こそこそ話している三人に気づいたルリが、すかさずツッコミを入れてきた。ツッコミレベルがかなりアップしている、迂闊なことは言えないな・・・と三人は互いを見合わせてばつの悪そうな顔をすると、肩をすくめながら艦橋から退散したのであった
数日後
搬入と補給を終えた一行は、一路ターミナルコロニー『アマテラス』へと向かった
そこは、ヒサゴプランの中核コロニーの中では、最も計画進捗率が高い場所であった
「つまり、最も狙われている言うことであります」
ブリーフィングルームでの説明を終えたラミアが、そう締めくくる
連邦側もある程度は同じような見解らしく、周辺海域の警備は比較的高レベル、コロニー内への接触の際は、そこそこ厳しいボディチェックが成されているという情報だ
「今回のコロニー訪問は、あくまで“様子を見る”事です。私は何もしません。とは言ってもそれは囮なので、内部の状況調査は別の人にやって貰います」
「潜入捜査と来たか。なら、俺の出番か?」
「アンタは艦のお守り」
ぴしゃっと言い返したのは、デュオであった
「・・・お前、いつからここにいた?」
「失礼だな、最初から乗ってたよ。なぁヒイロ?」
格納庫にな」
「それ、密航って言うんだよ、君たち?」
まぁ実のところは
最初からこれが二人の任務だったので、表から堂々と乗っても良かったはずだが、何を考えたのか、どこまで隠れられるか賭をしていたらしい・・・しかも、珍しくデュオが勝ったそうだ。きな臭い時だというのに、さらに黒猫が眼前を横切るようなものだ、とアクセルは心の中で愚痴った
「と言うより、彼らを見逃したオモイカネの方が心配でございますですが?」
「オモイカネはお二人と“客人”と認識してますから、好きなようにさせてたんでしょう」
ずずり、と茶をすすって返すルリは、至って冷静である
「と言うわけでその間、アクセルさん達は第一戦闘配備で待機、周辺海域の索敵・警戒お願いします。有事の際には独自での対応を許可しますので、各個人いいようにやっちゃってください」
もうハナっから襲撃があると言わんばかりの指示だ
「で、艦長の表向きの護衛は・・・」
「あ、それ俺のお仕事だから」
サブロウタが挙手して応えた
「おい、貴様が居ないのでは、何かあった時にナデシコを守りきれんぞ」
いくら彼らが凄腕と言っても、二機だけでは対応できる状況に限りがある
「私は頼りにならないでございますか、隊長」
「誰もそんなことは言っとらん」
もちろんアクセルがラミアを“信用”してないわけではない。しかし、物には限界という物があるのだ。もっと言うなら、二人のガンダム乗りは戦争終了後に、相棒を爆破して片を付けているので、余計に人手が足りないのだ
「その辺はご安心を。あそこの守備隊長、スバル・リョーコって人だって。知ってんでしょ?」
連邦軍に移籍したリョーコが、あそこにいて部隊を率いているという
彼女の腕の確かさは皆の知る所であるから、つまるところ何かあってもナデシコを守るだけに集中してもいいんじゃない?と言うサブロウタの考えなのだ
「それは渡りに船だな。なら艦長は任せたぞ」
「りょ~かいっ」

艦長とサブロウタの二人(+スパイ二人)を見送ったあと
デッキのソウルゲインのコクピットには、半分脚を搭乗デッキに投げ出して考え事をしているアクセルの姿があった
「隊長、第一戦闘配備中でありますですよ」
見回ってきたラミアがアクセルをたしなめた。だが、当の本人は別のことが気になっているようだった
「木連残党はともかく、ゲシュペンストの件・・・何故半年も先送りされたと思うか?」
普通に・・・普通に考えれば、ゲンシュペンストの存在が確認できた時点で、当事者とも言える自分たちを無理矢理にでも召喚し、分析への協力または戦闘への参加を要請する、という流れになっていておかしくないはずである
「ブライト艦長が言っていましたが、外見のみで判断するのは危険、と判断したのは妥当な理由かと思いますですけど・・・」
ラミアも疑問ではあった
単にシャドウミラーを騙る相手であったとしたら、何も自分たちを呼び出す必要はないだろうし、うかつにシャドウミラーの復活と言ったような空気を広げるのは好ましくない。そのために、裏付けを取ると言うことは確かに大事だ
「なおさら、俺たちを呼び出すべきだ。貴様ならあの写真一発で、デッドコピーかどうかぐらい判る。違うか?」
ラミアの情報分析能力は一級品だ。レモンがそう作ったからだし、本人もそうであろうと“努力”しているからに他ならない。言われてラミアはふむ、と顎に手を当てる
「次に考えられるのは、ゲシュペンストといえども3機では、ドラグーンやジムで十分対応できると考えられた故に、今まで放置されたと言うこと。他には所属勢力が最初は判然とせず、木連残党が有るため人員を割けなかったというパターン・・・」
「ダメだ。どれも半年も放置するような理由にはならん」
かといってアクセル自身、納得いく理由を思いついているわけではなかった
「それにヒイロとデュオもだ。“怪しい所を捜す”と言って、一体何が“怪しい”んだ?」
「?・・・テロリストが潜んでないかとか、爆弾が仕掛けられてないかとか、じゃ有りませんでございますか」
あいつら自体がテロリストじゃねーか、とアクセルは心で突っ込んでいた
「そんな程度のことで奴らがわざわざ、艦長を囮にしてまで侵入する必要はあるまい」
「・・・確かにそうでございますですわ」
それならコロニー側で、内部を徹底的に調査すればいい話なのである(その調査の質はどうであれ)。もしもテロリスト側に調査を知られたくない、と言うことであったとしてもだ、こっちにまで“内緒”にする必要はどこにもない
そういえば、彼らが任務というわりには、ハーリーとサブロウタは・・・ルリでさえ、彼らの作業詳細について知らなかった。あまりにも隠匿が過ぎる
(何だというんだ?コイツは思った以上にきな臭いことになってきた・・・もっとデカい隠し事をしている、のか。誰が、何のために?)
そして今このときが、その隠し事を明かす時なのだろうか

一方その頃
ルリ達に『コロニーの設備は何もかもが完璧だ!』と捲し立てる提督を尻目に、悠々と潜入に成功したヒイロとデュオ
「俺たちがこうあっさり入り込めてる時点でやばいっつーの、おっさん」
「無駄口を叩くな。お前は西、俺は東を回る」
彼らは事前に用意していたアマテラスの配線図を元に、二手に分かれて調査を開始していた。コロニーと言っても人が住むための物ではないから、通路は全て重機用となっている。必然的に小物を運ぶベルトコンベアとか、大量の配線をまとめる屋根裏があちこちに存在しており、二人にとってはやり易い場所である
「とはいえ、“無いもの”を捜すってのは・・・」
言いかけてデュオは、珍しく顔を強ばらせた
見た目には何の変哲もない、板で蓋をされた場所。蓋と言っても、MSが一体ゆうに通れるぐらいの高さはあるのだが。しかし地図を考えると、そこに蓋があるはずがない
「・・・ヒイロ、聞こえッか?物らしい場所を見つけた」
「先に進めそうか」
「どうだろうな。蛇がでるか鬼がでるか」
触れた瞬間に警報が鳴るだとか、電撃が走って一巻の終わりだとか・・・
「ビーコンだけ発信して、あとは任・・・」
そのときだった
ゴウン、という大きな音がして、コロニー全体に衝撃が走った
「0時の方向からあの黒い機動兵器が急速接近!」
突然の遠距離からの射撃。そして突然レーダー上に現れたそれに、ハーリーは驚き上ずった声で叫ぶ
ボソンジャンプでのご登場に付き、不意を突かれるのは覚悟してはいたが、まさか頭の上から来るとは
「おいでなすったか」
「ナデシコ、ディストーションフィールド展開します。二機は当艦より離れてください」
「了解した。アンジュルグ、威嚇射撃開始」
イリュージョンアローをまずは打ち出すラミア。狙いは違わなかったが、光の矢は機動兵器のディストーションフィールドに弾かれてしまう。そればかりか、そいつはこの脅しを物ともせず、いやむしろさらに加速してアマテラスへ突っ込んでいく
「何という無茶をするんでございましょ、あのロボットは」
そのまま外壁に突っ込むつもりなのだろうか。それはいくら何でも、ロボ自体の装甲が持たない
「おらぁ、行くぜ野郎共!」
次の出番は、アマテラスの外壁にひっついて待機していた、リョーコの部隊である
「亡霊だかなんだかしらねぇか、俺様が居たのが運の尽きだぜ!」
一斉にラピッドライフル引き金を引く、10機あまりのエステバリス達。しかし、それでもそのロボットは止まらない。展開され続けるディストーションフィールドで、全ての攻撃を弾き続ける
「リョーコの姐さん、部隊を下げろ!そのままでは・・・」
「んな・・・ろぉっ!?」
アクセルの忠告も間に合わず、本当に機体ごとアマテラスへ突入したロボの前に、3体ほどのエステバリスが吹き飛ばされてしまう。その惨状を振り返りもせず、ロボットは内部の通路を使って移動を開始する
「こんにゃろ、待ちやがれ!」
「俺も行く。貴様はナデシコを守れ」
「了解」
慌てて追いかけるリョーコ達に続き、アクセルもソウルゲインを駆ってアマテラスコロニーへ足を踏み入れた
「な、なんだこの騒ぎは!?」
ルリ達を案内していた提督は、突然の騒ぎの状況を全く把握できずにいた
「提督、なにやら大変そうなので、私たちはナデシコへ引き上げますね」
「ぬ、ぬぬぅ・・・ええい、勝手にしたまえ!管制責任者は何をしている?姿が見えない連中まで居るぞ。なにがどうなっとるんだ!!」
その様子を遠くから見ている者があった
「あらあら、もう少しここで研究してたかったんだけどね・・・ま、こうなっちゃったからにはしょうがないかしら」
謎の“蓋”の前で二の足をふんでいたデュオの前に、デットヒートの末リョーコ達を振り切ったそのロボが現れたのは、その少し後だった
ロボはデュオの存在を知ってか知らずか、自身の先端にあるドリル状のモノを使い、蓋を強引にこじ開けた。現れたのは、まだまだ奥がある長い通路だった
「うわっとっと・・・まったく無理すんだから!でも、これで明らかになるな。有るはずのない13番ゲート・・・この先、かい?」
デュオの声が聞こえたのだろうか
一瞬彼の方に向き直ったロボは、“行かせて貰う”とでも言うかのようにカメラ・アイを明滅させ、通路に侵入していった
「ヒイロか?仕事は終わり、ナデシコに撤収しようぜ」
「判った・・・今、俺たちがここで出来ることは、もう無いからな」
互いの意思を確認し合い、入ってきた侵入経路を急いで戻る彼らの姿が消えたのと、ロボを追ってきたリョーコ達が破壊された通路に入っていったのは、ほぼ同時だった
すさまじいデットヒートのため、部下が全員脱落してしまったリョーコ
今彼女と共にいるのは、あとから追いついてきたアクセルだけであった
「ンだこの場所は?こんなところがあるって、聞いてねぇぞ!」
犯人を追いかけてきたは良いが、なにやらおかしな場所に紛れ込んでしまったことを、彼女は本能的に察した
「聞いてないだと・・・守備隊のアンタが、か」
「ああ、アマテラスコロニーには、ゲートは12個しかねぇはずなんだ。けどここは・・・」
しかし次の瞬間、彼女は続きの言葉を飲み込まざるを得なかった
ゲートを抜けた先に、例の黒いロボが居たからではない
そこにあってはいけないモノが“有った”からだ
さすがのアクセルも、驚愕のあまり言葉を失ってしまう
『どうしましたですか、隊長?』
急にアクセルが静かになったので、ラミアが心配して通信を入れてくる
「・・・見えるか、これが」
アクセルはソウルゲインのカメラ映像を、アンジュルグとナデシコへと転送した。それを見た時ラミアでさえ息を呑み、ルリとサブロウタは戦慄した
「ルリ、居るんだろ?そこに居るんだろ!コ、コイツは何だよ・・・何でここにあるんだよ!これが!!
それは彼女らが火星の戦いで、遙か深宇宙に放り投げた『演算ユニット』に違いなかった
「そう、間違いなくその演算ユニットよ」
空間が揺れる感じがして、彼らの前にヴァイスセイバーとゲシュペンスト3機が出現した
「レモン・・・!」
『レモン様・・・』
「あら、久しぶりね、アクセル。ラミアも、居るのね」
元恋人同士だというのに、レモンはアクセルを一瞥くれただけで、黒いロボの方に向き直ってしまった
「ようこそ、テンカワ・アキトくん」
「アキトだって!?」
「本当にそいつに乗っているのか、テンカワ?」
さらにあり得ない名が飛び出たため、リョーコもアクセルも状況を整理できずにいた。それを知ってか知らずか、黒いロボは何も応えずに、ただヴァイスセイバーの方だけを見ていた
「貴方が捜してるのは、これでしょ?」
それに併せてヴァイスセイバーの背後にある演算ユニットの、一部がごうと音を立てて開く
「レ・・・レモン・・・!!」
それは、最もあってはならないモノだった
演算ユニットの中枢部とおぼしき場所に埋め込まれた、人の形をした・・・いや、ユリカの形をしたそれに、その場にいたアクセルをはじめとした全てのメンバーが、驚愕や怒りといった感情を覚えたであろう事は、レモンは予想できたことであって、大して意に介すことではなかったのかもしれない。アクセルの何とも言えない叫び声を聞いても、彼女は何も応えなかった
「てめぇ、ユリカに何しやがった!」
怒りも露わに叫ぶリョーコ
「演算ユニットを、もうちょっと上手く使えないかと思ってね。その実験に付き合ってもらってるの」
「上手く・・・?大体、あそこまでぶっ飛ばしたコイツが、何でここに!」
「たまたま・・・偶然よ。木連の皆さんはこれを探し当てた。私は彼らに助けられた。科学者の腕を見込まれた・・・そこで思い付いたのがね、A級ジャンパーの能力をみんなで分けて使えないかしら、ってこと。だってそのままじゃ、私たちみたいな普通の人間には、演算ユニットって無用の長物でしょう?」
そこまで言われて、ボソンジャンプの理論を知るメンバーは、何事が行われたのか悟って背筋に寒いモノが走った
「ま・・・さか」
「そう。演算ユニットとお話しできる人に、もっと働いて貰おうって筋書き・・・」
「そのためにユリカを・・・ユリカをぉぉぉ!!
《続く》
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テーマ : スーパーロボット大戦 - ジャンル : ゲーム

2009/01/04 23:38 | SS【スパロボ系】COMMENT(3)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

…大物ですね。

本当に頭が下がりますよ。テンポも流もいいし流石です。私のSSなんて本当に子供騙しにしか…

ラミアの言葉遣いについて一言
おかしくなるのは『敬語』のみです。だから普段と『ラミア語』を切り分けると緊迫感が出て分かりやすいかと。
例)
何という無茶をするんでございましょ、あのロボットは

何という無茶をするんだ、あのロボットは

そう言えば『漫画批評』どうしたんです?

No:1020 2009/01/05 00:16 | 飛白 #- URL [ 編集 ]

完全版!

完成おめでとうございます!
以前の「酒は呑んでも飲まれるな」から一転のシリアス一直線ですね~。
まぁナデシコが劇場版の時点でギャグはちょい厳しいでしょうけど・・・

なにはともあれお疲れさまでありますですのことよ、これがな(笑)

No:1021 2009/01/05 00:19 | ワイルドヘヴン #- URL [ 編集 ]

頭いてぇ

年始早々会議で遅くなったなり

飛白さん>
お褒めの言葉ありがとうございます
飛白さんのネタも、私に活力を与えてくださる、重要な栄養補給源でございます
>ラミアの台詞
ああ、あれは・・・なんつーか、アクセルに同意を求めて言ってる、ってシチュエーションなんです・・・判りづらいか

ワイルドヘヴンさん>
ご協力いただいてありがとうございました
ワイルドヘヴンさんの場合は、どこがどう変わったかを見ていただく、って楽しみ方になるかも知れません

No:1022 2009/01/06 00:44 | あるす #- URL [ 編集 ]

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