【スパロボ妄想】スパロボA the After【中編】

駄文
最近2chの旧シャアスレに、「シャアとアムロの口調を逆にしてみる」というスレができた
・・・おもしろい、かもしれない
こうしてみると、こいつら本質的には同じだな、とよくわかるのである・・・


前回から、ブログ全体の行間を少し広げてみましたが、いかがでしょう
見やすくなっていたら幸いです・・・

さぁ、中編です
今回のSSは、一応元ネタが判る人は、イコールオチが判っていると思うので、いろいろ先読みしてくださると面白いかも知れません


前回からの続き~


誰もがショックで動けなくなっている中、黒いロボだけが単機で演算ユニットへ・・・正確には、その前に立ちふさがっているヴァイスセイバーに突貫をかけた
本当にそれにアキトが乗っているのなら、ユリカを取り返そうというのだろう。だが、その前に例のゲシュペンストが立ちふさがり、それ以上の侵入を阻止しようとする。さらに他の二機が背後に回ってメガ・ビームライフルを構える
それが発射される寸前、アクセルが玄武剛弾を放って黒いロボを援護すると、黒いロボは眼前のゲシュペンストをディストーションフィールドで押しのけ、ヴァイスセイバーともみ合いになる。リョーコのエステバリスも、ヴァイスセイバーに向かって攻撃を開始した。結果的に三機のゲシュペンストを押しつけられた形のアクセルは、しかしその場を乗り切って見せようとする
しかし数回斬り合って、彼はおかしな事に気づいた
(どこかで見たような動き・・・?)
“人間”が乗っているような、特徴のある動きだ
そして、そう言ったように感じることがおかしかった。Wシリーズが搭乗しているとしたとしてもだ、(それらがいくら人間に近いとはいえ)こんなに癖のある操縦にはならないはずである。レモンが本当に木連残党とつるんでいるなら、木連の兵士が乗っているという可能性もあるが
(だが、ジンシリーズとPTでは操縦系統が違いすぎる。短期間で慣れれると言うものでは・・・)
ついそのことに気を取られたのか、アクセルは一機のゲシュペンストに後ろを取られていることに気づくのが遅れた
「しまっ・・・」
放たれるメガ・ビームライフル
「くっ、右肩ッ・・・!」
避けきれなかった。試合後の腕の痺れが出ていたのかもしれない
ソウルゲインの肩パーツが吹き飛ぶ。姿勢を崩したソウルゲインに、なおも迫るゲシュペンスト
だがそこに乱入者があった
金色の・・・百式が、ゲシュペンストに見事なローキックを食らわせ、体勢を崩させたのである
「百式・・・クワトロ大尉か、何故ここに!」
やり返そうとするそれに、背後からGP01fbがビームライフルを乱射して追い打ちをかける
「大丈夫かい、アクセル!」
「ウラキ少尉まで居るのか?あんた怪我・・・」
最初の接触以来、彼らとは何の連絡も取っていなかった。こちらはサイド5付近に向かっていたが、彼らは一度本拠地に回るとかで、サイド7の方向に向かったはずで、地球を挟んで真逆である。もしハーリーが緊急通信を行ったとしても、とてもこんな短時間で間に合うはずがない
『アクセルさん聞こえますか?ラー・カイラムが応援に』
「の、ようだな」
ゲシュペンストと1対1でやり合っている百式を見上げるアクセルに、コウが接近して通信を入れてきた
「幸か不幸か、途中で“拾い物”があってね・・・慌ててこちらに取って返したんだよ。間に合って良かった」
コウが何を言いたいのか、詳しいことを聞きたいところだったが、今は別のことを確認する方が先決だった
「クワトロ大尉、そいつは・・・」
『君が何を言いたいか・・・判っている。この感じ・・・』
そう言って二度三度ゲシュペンストと刃を交えたクワトロは、確信したように叫んだ
「アムロ!」
「さすがシャア・アズナブルね。早速バレちゃってたってわけ」
アキトとユリカのことでも驚いたのに、それに加えての台詞にアクセル達は開いた口を塞ぐ余裕もない。しかもレモンも肯定している
「何だと!?」
『えええ?どういうことなんです、これって!』
『判らない、一体何がどうなっている』
「その答えは私がしてあげる」
アキトとやり合いがながらだというのに、余裕のあるレモンの声
「通信回線はU-978よ。見てご覧なさい」
慌てて回路を開いたアクセル達は、映し出されたゲシュペンストのコクピット映像に、四度驚愕せざるを得なかった
「確かにアムロ・レイだ。しかし・・・」
「カミーユ、それにジュドーまで?!」
しかし、彼らの声が聞こえて居るであろう三人は、全くの無反応だった。その表情は乏しく、虚ろな瞳で正面を見据えている
「ほんと、最後にハマーン・カーンと応対してて良かったと思うわ」
「レモン・ブロウニング、貴様という女は!」
その台詞だけで彼女が三人に何をしたか、クワトロは瞬時に察したようだった
「彼らにはサイコミュの実験に付き合ってもらってるのよ。純粋なニュータイプに、サイコミュがどういう影響を与えるのか、と言うのをね」

ハマーンの例に及ばず、強化人間を運用するための手段として、サイコミュは“マインドコントロール”の手段として用いられてきた
しかし、純粋なニュータイプにそれが使われたという例は、今日まで知られていない
むしろニュータイプはサイコミュ兵器を使う立場であって、サイコミュに使われると言うことが常識的には無いからなのかも知れない

「あら、貴方は興味がありそうだと思ったのに、残念ね。面白いぐらい簡単に暗示が入るのよ、これを使うと。強化人間なんて不安定なモノにマインドコントロールをするより、ずっとずっとね」
クワトロの攻撃をかわしながら、レモンはそう言い放つ
レモンはアクシズを訪問した時、強化されたマシュマーやキャラを見たのかも知れない。彼らにかけられた記憶操作や、精神強化も全てはサイコミュで行われていたことだ。しかしそれは細心の注意を持って行わねばならず、下手をすればただの廃人になってしまう
「ニュータイプを戦いの道具に使うか!」
「貴方がそれを求めてるんじゃなくて?」
「ふざけるな!」
怒りを露わにしたクワトロが、アキトのロボに加勢するようにヴァイスセイバーに切り込むが、アムロが乗っているらしいゲシュペンストが、その前に立ちふさがって邪魔をする
「・・・シャア、殺す・・・今日こそ殺す・・・」
「ええいアムロ!貴様ほどの男が!」
一瞬がっちり組み合ったあと、再び1対1でやり合う二機を横目に、アクセルもソウルゲインをヴァイスセイバーに接近させる
「レモン、ややこしくになりそうなことを!」
「あら・・・これが私の望みだった、貴方なら判るでしょ?」
「闘争の続く世界を作る・・・あそこで負けておいて、往生際が悪いと思わんのか」
「何の因果か生き残っちゃったものでね・・・一応、義理もあるし」
さらにヴァイスセイバーに切り込もうとするアクセルだが、カミーユとジュドーのゲシュペンストが彼の邪魔をしてくる
「アクセル・・・お前は・・・生きていてはいけないんだ・・・」
「みんな嫌いだ・・・消えろ!」

「ちぃっ・・・!」
今の彼では、その二人ごと麒麟で吹き飛ばすような真似はできないと、レモンは判ってやっているのだろう
この一瞬の隙が仇となった
二機同時に放たれたスラッシュリッパーが、まともにソウルゲインに当たった
もちろんもろに喰らうアクセルではなかったが、何とか残った左腕を犠牲にして受け止めたものの、そのまま壁に叩きつけられてしまう
(ちっ・・・こいつら、こんなに強かったのかよ・・・?)
今のショックでどこか切ったか、モニターに僅かだが血飛沫が飛んでいる
そのモニターの画面には、ネオ・プラズマカッターを構えたゲシュペンストが眼前に迫っていた
が、そこに光の粒のようなものが映りこむ
「・・・やらせん」
あの黒いロボが眼前に現れ・・・ボソンジャンプか・・・ソウルゲインをかばった
その声は、たしかにテンカワ・アキトのものだった
「さてと、もう潮時かしら?」
レモンの声に反応して、ゲシュペンストは正しく動きを止めた。だらりと腕を下げ、力なく立ち尽くす姿は、まるで糸の切れた操り人形のようであった
「今日は顔見せだから、これで退散するわね。もうしばらくしたら、今の“雇い主”からお知らせがあると思うの・・・じゃあね」
言うが否や、ユリカが埋め込まれた演算ユニットごと、レモン達の姿がかき消えた
『ボ、ボーズ粒子反応あり、ジャンプです!周辺宙域、沈黙しました』
ハーリーからの通信で、とりあえずはその場が収まったことは判った。と言っても何も解決してはおらず、むしろ事態は恐ろしくまずい方向に向かっていた
『我らは火星の後継者・・・!』
先ほどレモンが言っていたであろう、“雇い主”の高らかな宣戦布告が、ナデシコを通じてその場の全機に流れていたからだった
アムロが行方不明になったのは、これまた半年前の作戦行動中だった
そのとき共に行動していたクワトロが、妙な“音”のようなモノを聞いたと思った時には、彼の姿はすでに消えていた。何か催眠暗示的な波動が流れていたのかも知れない。同じ場に居て影響を受けなかった件については
「自分がニュータイプのなり損ないだったことが、幸運だったのかも知れんな」
クワトロはそう自嘲するしかなかったようだった
時を置かずして、月面のファから木星のルーから、相次いでパートナーが行方不明になったという連絡が入った
状況はクワトロが遭ったのと同じような形で、彼女らも妙な“音”を聞いていた
それはロンド・ベル隊としてだけでなく、連邦軍全体にとってまずいことだった
すでに当時でさえ、木連残党の行動が活発になっていた中、連邦でも最強と言われるパイロットが行方不明になったなどと、公にすることはできない
プリベンダーを通じて三人の行方の調査を始めたと同時に、ロンド・ベル隊では彼がいるかのように見せかける裏工作を講じざるを得なかった
その後何度かあのゲシュペンストと対峙しては居たものの、クワトロ以外はまさかそれにあの三人が載せられているとは思いもよらず、今の今まで隠し事をしてきたのだった
そのため、ルリ達にさえ真実を話せなかったことが申し訳ないと、ラー・カイラムの作戦室でブライトは頭を下げて謝罪してきた
「ブライト艦長が謝る事じゃないです。それは同じ状況だったら、私だってそうしてます」
「すまん、ホシノ艦長にそう言ってもらえると、いくらか助かる」
アクセルも同様の気持ちだったので、あえて彼らに突っかかるような真似はしなかった
(半年のブランクはこのため・・・と考えることはできる。しかし、だ)
まだ何か引っかかるモノがある、という部分だけは拭えなかった
「ダメだね、コロニーん中にゃめぼしい情報は残ってないよ」
コロニー内を調査してきた、ヒイロとデュオが戻ってきた
「徹底的に情報を破壊してあった。そもそもこのコロニーは捨てる気だったと考えることができる」
「連邦の資産を無駄遣いさせた上、武装蜂起ね。やってくれるじゃないの、敵さんも?」
万丈はそう言うが、感心している場合ではない
「で、サブロウタくん。『火星の後継者』の要望はなんなんだい?」
「元同僚達の阿呆な声明文を解説するんッスか?」
嫌そうにサブロウタが要約した所によれは、要するに火星の遺跡は再度こっちが制圧した、ボソンジャンプの技術は全てこちらが把握している、ということは軍事的にはこちらが圧倒的に有利だ、無駄な抵抗を止めて我々の指示に従いたまえ・・・と言うことらしい
「判りやすいと言えば判りやすいが、一つの問題として、彼らの支持者が予想以上に多いと言うことなのだ」
レディ・アンが送ってきた資料によれば、『火星の後継者』の武装蜂起に応じる元木連軍人が多いのは予想が付くとして、ヒサゴプランを運営していた面子のほとんども、支持の方向に回っていると言うことだった
「どうやら最初からはめられてたんだね・・・地球連邦は」
ヒサゴプランを主体運営していたのは、アナハイムやネルガルと対立関係にあった、クリムゾンというグループ企業であった。トロワの追加情報を加味するに、彼らはずっと以前から『火星の後継者』と関係があったらしい
「そして今回の件で、いくつかのことは判った」
「ああ。まず、ユリカ嬢の生存と、どうやらテンカワくんも生きているらしいこと」
「イネスさんの死も、これで説明が付きそうだね。おかしいとは思ってたんだが」
「アキトが乗っているメカがエステバリス系のモノに間違いなくなってる以上、ネルガルはもっとなんか隠し事をしている、ってことだよな」
(だが下手をすれば、テンカワが生きていたことすら、奴らは知っていて隠していたことになる、か)
もしそうだとするならば、こういう隠し事をやってのけそうなのは、例のロン毛以外に思いつかないのだが、相変わらずあの男とは連絡が全く付かないと、プロスペクターと応対したカトルはお手上げだったと言う
「そう言えばその、黒いロボはどうしたんです?」
「コロニー外壁までは追ったんだが・・・ロストした。すまん」
バニング達もその後必死で捜索したが、痕跡もないという。ボソンジャンプしたのかもしれないが、ハーリーはボーズ粒子の発生を確認していない
「最後の問題は、レモン様が彼らと組んでいる、ということでございますです・・・」
「どったのラミアちゃん、元気ないね」
言い終わった後、ラミアが急に目線を落としてしまったので、サブロウタは気を使って声をかける
ラミアは"何でもない"と答えようとしたが
「しょうがないよ。仮にも“母親”と言える人が、あんな非人道的なことをやった場面を、間近で見ちゃったらショックを受けて当たり前だよ、ね?」
万丈がそうフォローを入れてくる
「・・・かも、しれない」
あれから5年も経っているので、ラミアの情緒という部分は、以前にも増して大幅な向上を見せていた
(だが、まだこの手のことには鈍いな、まったく)
アキトとユリカの葬式の時も、泣くという動きがなかった。辛いという気持ちは確かにあったらしいが、悲しいということを意識するのが、どうにもまだよくできないらしい
「そういうこと。確かにきっついね。俺だって正直、こんな元同僚見てられねぇもんな」
とはいえ、サブロウタはラミアの詳細な自出は知らないので、万丈の説明で納得していた
「あ~・・・まぁそれはいいとしてだ。レモンは技術者としての腕は一級品だ。その裏知恵を得た木連の牙城を崩すのは容易ではない」
アクセルは話を戻す。彼に限らず、これは頭の痛い問題だ
挙げ句、あのニュータイプ三人組を配下においているなんて、タチが悪いの何物でもない
「あの三人のことは考えなくて良い。最悪の場合は私が撃墜する」
「ちょ、クワトロ大尉!?」
全員が驚き彼の方に振り返った。しかし、当の本人はサングラスの下に表情を隠したままだった
「あんた、まさか・・・」
「彼らの能力が、一部の暗愚な輩に利用されるのは本意ではない・・・ただ、それだけだ」
自分自身の立ち位置故、要らぬ疑いをかけられるのは承知の上だ、とクワトロは付け加えた
「てぇかよ、『火星の後継者』っーぐらいなんだから、奴らの居場所は割れてんじゃねぇか。とっとと火星に乗り込んで、ユリカを助けに行こうぜ」
「それがちょっと難しい問題があるんです、リョーコさん」
燃えているリョーコを、コウが諫めた。と言うのも、彼が先ほど言っていた“拾い物”に関わることだという

彼らがサイド7に向かう途中、不意に救難信号を受けた
現場に急行した彼らが見たのは、木連残党・・・今にして思えば『火星の後継者』・・・に追われた、ぼろぼろのダイモスとそれに抱かれたガルバーであった。どうにか敵を追い払ったところで彼らを回収し状況を確認した所、幸いにしてナナと京四郎はそれほど酷い怪我は負っていなかった。しかし一矢は相当長い間ガルバーを守って戦い抜いたせいで、立ち上がれないほどの衰弱状況にあり、現在ラー・カイラムで集中治療を受けているという

「ちょっと待ってくれ、火星と言うことはゼクスくんとノイン女史も居るはずだ。彼らはどうしたんだ?」
万丈の質問に、コウは首を振った。ナナ達も状況は判らないという
「あの二人が簡単に死ぬとは思えん。それより、状況説明を進めてくれ、少尉」
ヒイロはある種冷たく言い放ったが、ゼクスを信頼してのことではあった
「ああ。それで、京四郎さんから聞いて判ったのが、火星周辺の防衛網の厚さなんだ」
衛星軌道上に隙間無く配置された、ナナフシによる全自動砲撃システムは、火星に近づく物も出ようとする物にも容赦なく牙を剥いているという
以前地上であれと相対した時と違い、身を隠すような場所もない上に複数機配置されていると言うから、その間を抜けるというのは容易ではない。ダイモスが予想以上に破壊されていたのも、それでもナナフシの間を抜いて強行突破してきたためだ
「なんだとぉ?んじゃぁこっちは手も足も出ねぇじゃねぇか!」
『端的に言うとそう言うことになる・・・しかし、手をこまねいているわけにもいかん』
モニターの向こうから突然、アクセル達には見慣れない男性が会話に割り込んできた
『諸君、私が地球連邦宇宙軍提督、ミスマル・コウイチロウである』
(つーことは、こいつがミスマル艦長のオヤジさんか?・・・似てねぇ!
サ○ーちゃんのパパ、でございまするか?)
(それは言わない約束)
インパクトの強さに一部の人間が引いていたが、ミスマル提督は平然と続けた
『ブライト艦長、報告は聞いた。火星の後継者とやらのこと、アムロ大尉達のこと、テンカワくんのこと・・・そして娘のことも』
「心中、お察しします」
『いや、生きていてくれただけでも、私にとっては充分嬉しいことだ。そして今は、地球全体の危機の方が優先する。私情を挟むわけにはいかん』
ミスマル提督が重度の娘バカなのは、ほぼ全員承知なことなので、それを考えるとあまりに辛い決断に違いない
『正直、彼らにシステムを掌握されている以上、我々ができることは圧倒的に少ない。参謀本部でも何かできないか練っているが、降伏意見が出るほど切迫しておってな。だが私は、諸君が居る限り、それは気の早いことだと思っている』
ずいぶん過剰な期待をかけられたものだ・・・とアクセルは皮肉な笑みを浮かべた
『とにかく今は補給と修理を受けてくれたまえ。月面のフォン・ブラウン市にその手配がしてある。それとホシノ艦長・・・事態が事態だけに君らナデシコ隊を、再びロンド・ベルに一時編入することになった。これからも頼む』
「よろしいか、ホシノ艦長?」
「了解しました。ソウルゲインの自己修復の時間確保と、一矢さんの本格的な治療も必要ですからね」
ルリは頷くとモニターのミスマル提督に敬礼し、万丈らを引き連れてナデシコに戻っていく。ブライトもバニング大尉を連れて艦橋へと戻ることにした
「強いなホシノ艦長は。あれだけのことがあっても平然として」
「艦長であれば、いかなる時でも部下に動揺した所を見せられない・・・以前ミスマル艦長がブライト艦長に言われたことを、彼女なりに実践しているのだろう」
そうですね、とコウは返事をしながらうなだれた
「そうなら尚更、僕は・・・」
バニングはコウの肩を叩いて首を振った
「・・・で、大丈夫なのか、アムロ達の件は」
次に話題を振ったのはブライトだった
「まぁ・・・何とかなるだろう」
確信があるのか無いのか、クワトロの返事は曖昧だったが、ブライトもそれ以上は追求しなかった
「それより・・・は大丈夫なのか?」
「うむ、定時連絡は続いている」
「間に合うといいが」
そこまで言った時、艦橋へ続く扉が開いた
「よぉし、ラー・カイラムとナデシコは、これよりフォン・ブラウン市へ進路を取る。各自索敵哨戒怠るなよ!」
「宣戦布告をしたは良いが、演算ユニットがアレでは、ただの脅しにしならないのではないのかね?」
草壁がそう言う背後には、ちょっとけだるそうなレモンが立っていた
「安心なさって。大体のコントロール方法はわかってきたので」
ほう、とだけ草壁は返答すると、ガラスで仕切られた向こうにある部屋に目をやった
そこには、まさにフォウやロザミアがかけられていた、あのサイコミュ装置につながれているアムロ達三人であった
「まぁ、あの三人を籠絡したのは素晴らしいと素直に評価しておく」
「そう言っていただけると・・・ありがとうございます」
こうなったのは本当に、天文学的偶然だったと、レモンは今でも思う
吹き飛ばされた先にあったのは、ゲシュペンスト数機とすでに“壊れた”Wシリーズだけであった。ヴァイスセイバーもあまり言うことを聞きそうになく、このまま緩やかに死んでいくのか、と思った時に彼らに拾われた
それは良いものの、こちらも人手不足なのは目に見えて判ったし、それほど腕の立つ人物が集まっているわけでも(当時は)なかった。そこでレモンは大胆にも、アクシズでこっそり入手していたサイコミュシステム持ち出した。シャドウミラーが健在の時に作ったは良いものの、結局使う機会がなかったそれが、今になって役に立ったのは何の運命の巡り合わせだろう
「う、うう、う・・・あああっ・・・や、止め・・」
「あああっ・・・!俺は、俺はぁああ・・・!」
「敵・・・俺の敵は・・・どこ・・・だ・・・ぁああ!」

サイコミュシステムからサイコウェーブが発せられるたび、三人はそれにあがらうように悶え苦しむ
「・・・あれはなにを?」
「今後のことも有りますからね、“再調整”を」
レモンはくすっと笑いながら答える。なるほど、と草壁は答えた
「やはり君はできる人らしい。彼らが動くと読んでいるのだな?」
「無理無茶無謀でも何とかするのがロンド・ベルですから、どうにかしようとはするでしょう・・・でもまぁ今回はキツいでしょうねぇ」
先にコウがメンバーに説明していた防御姿勢に加え、ボソンジャンプシステム掌握という状況の中では、身動きの取りようがあるとはとても考えられない
「特にラー・カイラムは無理でしょうね。ほんの少し可能性があるとするなら、ナデシコしかないでしょう?」
ダイモスを逃がしてしまったことで、こちらの居場所はある程度バレてしまっている。そこに飛び込んでくるとしたら、ディストーションフィールドを持つナデシコ以外には考えにくい
「電子の妖精、か・・・暗殺部隊を送り込むに越したことはないだろう」
「じゃぁちょうどいいですから、演算ユニットをどう扱うのかお見せしますわ」
そこでレモンが見せたのは、『アキト、どこに行きたい?』というユリカのデート願望を、演算ユニットへの通訳手段として使うという物だった
アキトになりすましたレモンが、フォン・ブラウン市を指定した瞬間、暗殺部隊の姿はかき消えたのである
サブロウタに差し出されたアイスクリームを、ルリは無言で受け取って口に入れた
作戦会議が全くまとまらず、各々頭を冷やそうと言うことになったメンバーは、思い思いの場所に足を運んでいた
ルリはサブロウタを連れ、フォン・ブラウン市の公園でぼーっとすることにする、とだけ皆に言い残して出て行っていた。彼女の心境を思うと、無理にどこかへ連れ出そうと言うことを言える者は一人もいなかった
「星が綺麗だぁねぇ、艦長」
ドームの向こうに見える星空を見て、サブロウタが何となくそう言った
周囲の光景は昼間だが、ドーム自体は採光のために宇宙のそのままを見せている
「こんなに綺麗な場所を目にしているのに、みんな喧嘩するんですね」
「そーなんだよなぁ。ま、俺も人のこと言えたタチじゃねぇけど」
正義正義振りかざしてドンパチやり合っていた自分に言える義理はないか、とサブロウタは笑った
「復讐、恨み、プライド、いろんなもんを抱えちまうと、綺麗な風景なんて目にはいんねぇのかも知れねぇな」
「それが人間って事なんですね。だから、そんなになっちゃったんですか?」
ん、とサブロウタがルリの視線の先に目を移すと、そこには黒衣にサングラスをした男が立っていた。一見しただけで、死線を何度も乗り越えた戦士独特の、近づきがたい張り詰めた空気を感じさせる
あまりに怪しい出で立ちだが、その髪型にサブロウタは見覚えがあった
「あんた、テンカワ・・・」
「どうして、生きているって教えてくれなかったんですか?」
そう問うルリに、アキトはにこりともせずに返事をした
「いや、確かにキミの知っているテンカワ・アキトは死んだんだ・・・だから、キミに彼からの預かり物を渡しに来た」
手渡されたのは、あの『テンカワ特製ラーメン』のレシピであった
「・・・私が欲しいのはこんな物じゃありません。大体、このラーメンのレシピは、アキトさんがユリカさんを取り戻した時、絶対に必要じゃないですか!」
「もう必要ないんだ・・・彼が生きた証、受け取って欲しい」
「それ、格好付けてます!」
ルリは泣きそうなのを必死にこらえ、強がって見せていた。自分に優しかったアキトが、ユリカと幸せな家庭を築くはずだった彼が、復讐と怨念の権化と化した姿など、見たくはないに違いない
それはサブロウタにでさえ判るほど、ハッキリしたものだった。歯がゆい状況だが、彼が出る幕でないのもまたよくわかっていた
「違うんだよ、ルリちゃん・・・」
自嘲気味にそう言ったアキトがサングラスを取った時、ルリもサブロウタも息を飲んだ
「奴らの実験で頭ン中かき回されてね・・・それからなんだよ。特に味覚がね、ダメなんだよ。感情が高ぶると、ボーッと光るのさ・・・漫画だろ?」
アキトの顔中に走る、ナノマシンやその他の実験配線を施された跡が、あまりに生々しく残酷であった
「もうキミに、ラーメンを作ってあげることはできない・・・」
そのときだった
ルリ達の周辺で一瞬、まばゆい光が走ったかと思うと、今までそこに居なかったはずの木連兵士数名が、どこからとも無く出現したのである
「これは・・・!」
「た、単体ボソンジャンプ!?」
サブロウタは身構えた。こいつらの出所はともかく、目標がルリなのは考えるまでもない
「電子の妖精、覚悟!」
いくらサブロウタが木連柔術の使い手でも、捌ききれるか微妙な数だった・・・が
「貴様らは正義か~っ!」
草むらから青竜刀を構えて飛び出したのは、正義マニア・五飛であった。続いて
「悲しみに暮れる乙女の命を奪おうとは、人間の風上にも置けない悪党だね・・・世のため人のため、火星の後継者の野望を打ち砕く破嵐万丈! この日輪の輝きを恐れぬのなら、かかってこい!!
ビシィっと決めた万丈相手に、火星の後継者達はと言うと
「う、か・・・かっこいい!?」
格好良さに痺れて動けなくなっていた
「隙有り!」
続いて四方から飛び出るアクセルとラミアにリョーコ、ついでにコウの活躍もあり、ルリの暗殺計画はもろくも崩れ去ったのであった・・・
「何だよ、みんなホシノ艦長の後を付けてたわけ?」
「この場合結果オーライだろ。こいつら締め上げて、もうちょい詳しい状況把握もできるだろうし」
「それにしても、お前はいつも唐突だな、張五飛」
「俺は、ボゾンジャンプ掌握という名の下に築かれる正義が」
「はいはい、もうその先は判ってるから」
とまぁ、みんな達成感を満喫していた
「ふぇ~、僕、全然役に立てませんでしたぁ~!」
飛び出すタイミングを失って泣き崩れてる、ハーリーを除いて
「そんなこと無いですよハーリーくん。心配してきてくれて、ありがとう」
よしよし、とハーリーをなだめるルリ
「か、かんちょぉ~」
一方でアキトは、この状況に何か気づいたらしく、無言で踵を返した
「おいテンカワ!」
「奴らはユリカを落としたようだ」
「・・・何?」
アキトの一言を聞いて、万丈は顔色を変えた。つまり、この火星の後継者達は、ユリカを利用してここまでジャンプしてきたと言いたいのだろう。それは、彼らのシステム掌握は完全な物になったと言うことだ
「草壁の大攻勢も近い・・・」
そこまで言うと、アキトは早足でその場を去っていった
「なるほどね、それで僕が受けた伝言の意味、判ったよ」
コウはただ単にルリを付けていたのでは無さそうだった
「ホシノ艦長、何とか作戦らしい物ができそうなんだ。そのために、艦長達ナデシコメンバーは、急いでネルガルのドッグに向かってくれないか」
「判りました。それで、ラー・カイラムの皆さんは?」
「恥ずかしい話・・・僕らじゃ今回の件、ほとんど手出しできない。判ってたと思うけど」
コウは本当に悔しそうに言った。肝心な時に何もできない、と言う目を何度も味わっている彼だから、その胸中は複雑だろう
「相手が相手だからな、アンタがそう責任を負ったような顔をすることはないだろ」
アクセルがそう言ってくれるなら、と思ったのだろうか。コウは少し明るい顔になって、拳をぐっと握りしめた
「でもその代わり、地球近海については安心して欲しい。絶対僕らでカバーする」
「信じてます。だって皆さんは強いですから」
コウの思いを受け取ったルリはそう返した
「ついでにあの三人も取り返してくるから、楽しみに待ってなよ、少尉!」
リョーコもまた熱く応えた。コウはその熱さが嬉しく、また頼もしくもあった
「僕もそれを信じてるよ・・・いってらっしゃい」
「行ってきます」
ぺこり、とお辞儀するルリを伴い、アクセル達は大急ぎでフォン・ブラウン市のドッグへと駆けていった。五飛はというと、縛り上げた火星の後継者達を引きずって、プリベンダーのフォン・ブラウン市支部へ消えていく
一行が見えなくなった頃、物陰から現れた人物があった
「迫真の演技だったよ、少尉」
「・・・僕には性じゃないです。本当は貴方の方が適役だったんじゃ?」
コウは苦笑いしながら、クワトロのに歩み寄る
「人聞きが悪いな、少尉。私はいつも嘘のつけない気質の軍人のつもりだが」
「偽名名乗ってて言える立場じゃないでしょ」
あの戦いを経て、コウも言う男になったらしい。赤い彗星を相手に一歩も引かない
「さて、我々も動くぞ」
「みんなの準備は大丈夫なんですか」
「問題ない、どこもな。あとはホシノ艦長にかかっている」
「そうですね・・・」
『いつまでこんなことをやってるんです?』
『まだだ。まだ時じゃない。慌てると全てし損じてしまう』
『そうは言っても・・・いい加減やんなってきたよ』
『正直、疲れてきてるというのもあります・・・このままじゃ』
『判ってる。しかし現状を考えれば、攻め時はそう遠い時じゃない』
『我慢はするけどさ・・・頼むよ』
『それはこちらもだよ・・・わかってるね?』

《続く》
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テーマ : スーパーロボット大戦 - ジャンル : ゲーム

2009/01/06 00:42 | SS【スパロボ系】COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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