【スパロボ妄想】ガンダム仕事人~第八話~

なかなかスパロボ系のニュースがありませんね
今年は、過去作品のリメイクさえない、と言うことなのでしょうか・・・
せめて“R”が出てくれば、次の“D”への布石になるので嬉しいな、と思ってるのですが


さて、なんかだかずるずると書き綴っているこのSS

最初はオチ無しで、ただ仕事するガンダムWのガンダムチームを書きたかっただけなのですが、徐々に構成ができてきていて、一応エンディングだけは決まった状態になっています
そこにどう落とすか、が重要なわけです

で、わたくし最近、なるべくガンキャラを中心に据えないよう、ストーリーを練り練りしてたんです
が・・・オチに至るルートを考えるうち、シャアさんがヤバいことになってきております
これでいいのだろうかと、そんなことで悩んでたりします
たかがSSなのにねぇ・・・


そこは、限りなく近く遙かに遠い世界
華のバンプレ国
ここはスパロボ横町


南極からやってきたジョッシュとリム兄妹は、彼らの父親のせいで無くなったモノを捜し、方々を尋ねて回っていた
だが、今のところ有力な手がかりはなく、ギュネイと共にその日暮らしの銭を稼ぎつつ、慎ましくしかしコツコツと、捜し物を続ける毎日であった
そんな彼らが今日訪れたのは、永井藩の銭湯・鉄
「ラドクリフ・・・南極の、ラドクリフ先生のところの?」
「親父を知ってるのか」
「有名だぜ、いろいろとさ」
出迎えた甲児が意味深げに笑うのを、ジョッシュも敢えて否定することができなかった
「それにしても、“落ちてきた”モノを捜すって言っても、いくら何でも手が借りなさすぎだろ」
ジョッシュの用件を聞いた甲児が、ちろりと瞳を向ける先
「なに、俺に用?」
相変わらず記憶喪失のままのアクセルは、今日も元気に銭湯掃除に精を出していた。が、甲児の視線を目ざとく感じた彼は、ニヤニヤ笑いながらこちらに近づいてくる
「落ちて来たっても北の方からだったしなぁ」
「確かにアレは人の形をしてたモノなんだけど、人そのものじゃないんだよな」
「は?なんだよ、俺に判るように説明しろよ」
思わせぶりな二人に、アクセルはまるで仲間外れにされた子供のような態度を取る
「ジョッシュ。貴様が捜してるもの、俺も敢えて詳しく聞かなかったが、ここまで時間がかかっていることを考えれば、もう少し情報提供してくれたって良いんじゃないのか?」
ぶっきらぼうに言うギュネイだが、少しでもジョッシュの負担を減らしてやろう、と言う思いやりの気持ちから出ているのは、ジョッシュも知っていた
「そう言われても、俺自身もハッキリしたことは判らないんだ。とにかく言えることは、親父が古代遺跡から、何かを開放してしまった、と言うことだけなのさ」
それは、この世界の創世に関わる、重要な古代の遺物らしい
それらが群れを成して飛び去り、一転南の空に散らばっていったことから、ジョッシュ達はバンプレ国に何かあるのでは踏んで、慌ててその後を追ってきたのである
「まぁそうだとしたら、捜索の手を横町からこっちに伸ばしたのは、確かに正しい判断かも知れねぇなぁ」
ふーむ、と顎に手を当てて考え込む甲児。どういう事だ、とジョッシュが聞くと
「横町のお城の近くに、雷電(ライディーン)様を奉る社があるんだ。その力は、見えない壁で横町を取り囲んでいて、少なくとも横町の真上からは、変なモノが入る隙はない、はずだぜ」
雷電様はそもそも、横町に忍び寄る災いをある程度予測してはね除けてしまうため、そう言った妙なモノは周囲の藩に吹き飛ばされて来ることも、ままあるのだという
「ま、そもそも騒ぎってこと自体、ほっとんど無いんだけどな」
「そう言う意味では、最近の騒ぎは異常っちゃ異常だな」
まかり間違えば、その一翼を担いかねなかった自分を思い、ちょっとギュネイは複雑な気持ちになる
「とにかく、何か判ったら知らせてやるよ。早く南極に戻れるように祈ってるぜ」


収穫は無かったモノの、ジョッシュらとあれやこれや話し合いながら、横町へと帰り着いたギュネイは、とある番屋の前に見知った顔が一堂に会し、なにやら深刻に話し合っているのを見つけた
「カミーユ・ビダンに、コウ・ウラキに・・・貴様ら、雁首揃えて何してる?」
ギュネイに気づいた彼ら
いつもだとギュネイの普段の態度が悪いものだから、ここで悪態付かれてリアルファイトに陥るのがパターンなのだが、今日は彼らのほうに元気が無く、はぁ~っとふか~~い溜め息をつかれてしまう
「なんだなんだ?そんなに深刻な問題なのかよ」
すっかり肩を落としている彼らに代わり、その場に混じっていた正樹が代わりに応える
「俺も今聞いたんだけどよ、アムロの旦那が引き籠もっちまったらしいんだ」
「なに、あのアムロ・レイがか?」
目を白黒させるギュネイだが、後ろで聞いているジョッシュ達には何が何だか判らない
「ギュネイ、そのアムロって人は何なんだ?」
「ん、ギュネイ、そいつらは?」
「ああ、最近横町に、なにやら捜し物をってきた、ジョッシュだ」
そう言って、ギュネイは正樹に一通りの経緯を話してやる。そうした後、今度はジョッシュにアムロのことを語る

十数年前のこと
この平和のただ中にあるバンプレ国が、天下を真っ二つに分けて戦争をしたことがあった。その発端は、字音藩の反乱にあったのだ
その後の経緯は長いので割愛するが、その戦乱の中で彗星のように現れ、戦を収束に導いた英雄の一人が、そのアムロであった
当時、まだ幼子であったギュネイは、幸か不幸か字音藩に住んでおり、その小さな目で捉えたアムロの姿は、白い流星とも白い悪魔とも映り、これに対峙するシャアはまさに赤い彗星だった


そんな華々しい過去を持つ彼が、いきなり引き籠もったとあればただ事ではない。横町の警備を司る、踊鈴(ロンド・ベル)組頭領がその様では、確かに他の隊の士気にも関わろう
「そいつぁただごとじゃないな・・・一体全体、何があったってんだ?」
さしものギュネイも事の深刻さを感じたようだった。が、今度はカミーユやシローが互いに顔を見合わせる。しばらくして後、コウが申し訳なさそうに口を開く
「えっとさ・・・最近南町に配属された、クワトロって人」
「ああ・・・あの分かり易い人ね」
それはどこからどう見ても、事件を起こしながらいけしゃあしゃあと町に舞い戻ってきた、あのシャア・アズナブルにしか見えない男であった
「その分かり易いはずの人が問題なんだよ」
まだ言いづらそうにしているコウ
「回りくどいぞ、コウ・ウラキ。ハッキリ言え」
イラついて答えをせっつくギュネイに、コウは仕方ないなぁと言うように、これまた深いため息をついた
「普通なんだよ」
「は?」
突拍子もない答えに、ギュネイは素っ頓狂な声を上げる
「余りにも普通すぎるんだよ。この間なんてさ」

~コウの証言~
僕が庭で、ガトーとの決闘に向けて剣を練習していたんだ
そうしたら後ろから、あのクワトロの旦那が近づいてきて、声をかけてきたんだ
「ウラキ君、練習に余念がないようだな」
僕は何気なく、これからガトーと一対一の勝負があるから、手を抜けないって返事をしたんだよ。そうしたらさ
「そうか。ではお節介ながら一つ忠告させて貰おう。君の剣は突撃することには、よく鍛錬されている。だが受け流すという要素がまるでない。ガトーはかなりの手練れだろう。手練れ相手に、最初から全力を出しては、己の手の内を全て見せてスキだけ大きくしてしまうぞ。おそらくガトーもそれを判っていて、最初君を軽くあしらうだろう」
僕は驚いたよ。だって僕がいつもガトーに負けるパターンを、あっという間に指摘してくれたんだからね
「真剣勝負といえども、心理戦の心得も必要だ。君がガトーの剣を受け流し、焦らせ消耗させることができるようになれば、勝率もグッと上がることだろう」
僕は都合の良いことだけど、是非それについて指導して欲しいとお願いしたんだ。そうしたらあっさりオッケーさ。お陰で次の日の決闘で、僕はようやくガトーに一勝したんだぜ


「・・・シャア・アズナブルが、指導ねぇ」
基本的に“見て覚えろ”か、“付いて来れないなら死ね“タイプの指揮官であるシャアが、そんな風に的確にアドバイスするとは思えない
「アドバイスと言えば、こんなこともありましたよ」

~カミーユの証言~
俺が北町のジェリドと仲が悪いのは、みんな知ってると思う
ヤツには名前女扱いされて以来、何かあるとぶつかり合って仕方ない
その日も、俺の縄張りにアイツが踏み込んできたんで、取っ組み合いの大喧嘩になっていたんだ。子供っぽいって言うかも知れないけど、俺にとっては大事なことだ
ところがその間にふと手が見えたかと思ったら、俺もジェリドも殴り飛ばされてた
驚いてその拳の主を見上げたら、そこにクワトロさんが立ってたんだ
「お前達、横町の秩序を維持する十手を預かっている身で、自分自身が騒動を起こしてどういうつもりか?」
そりゃあそうなんだけど、俺だって人間だから感情的にもなる。それはジェリドも同じだったみたいで、珍しくその時は俺が思ったのと同じ事を、アイツが口にしてたよ
「確かに人には感情がある。故に争いは起こるが、それに身の全てを委ねて起きたのが先の戦だ」
その一翼を担ってたんだろ、アンタ持ってジェリドが喧嘩をふっかけてた。多分あの人の年齢を見てそう言ったんだろうな。俺だったら逆上してたかも知れない、そんなことを言われてなお、クワトロさんは冷静だったよ
「そうだ。だから未だに嫁さんももらえん・・・戦いの臭いが消えんからな。だが、そんな目に遭うのは私だけで充分だ。未来を創るのは老人ではない」
そんな風にしんみり言われちゃ、俺はもとよりさしものジェリドも、一言だって言葉を出せなかったよ。その場で仲直りの誓いを立てさせられて、俺はもう一発修正を喰らって開放さ


「理知的なように見えて、実は戦争大好きな癖に、どの口で・・・」
「ああ、そうだよな・・・ピンクのカバさんが見えます
「ギュネイ、電波受信しすぎだ、しっかりしろ~?」
遠くに行きたくなっているギュネイを、横で話を聞いていたデュオが引き戻そうと必死になっていた。もちろんデュオも頭痛がしているのは言うまでもない
「ああ!そうだ聞いてよ、ウチでもこんなことあったんだ」
と、話に割り込んできたのは、DC団頭領の娘・リューネである
「最近ウチに入った新人いるでしょ」
「ああ、あの巨乳でクールな美女ね。なかなかのスタイルだよなぁ」
口数は少ないが、仕事は的確にこなす才女タイプの女性で、団内でも評判が高いともっぱらの噂であった
「あの変な口調さえなけりゃ、もっ完璧なんだけどな」
「どこ見てんだよ、正樹のスケベ!」
間髪入れずにリューネのビンタが正樹の右頬を襲った
「いて、イテテ!何しやがるリューネ、止めろ!」
「あ~・・・お惚気良いから、進めてくんない?」

~リューネの証言~
そ、あの娘と初めて見回りに出た時だよ
アタシはウチの自警団がどこをどう見回って、何を注意して見なきゃいけないかを説明してた。と、そこに通りかかったのがクワトロの旦那だった
「見慣れない顔だな」
って言うんで、最近雇った新人のラミアって言うんだよ、って説明したわけ
ラミアも緊張してたみたいで、『ラミア・ラヴレスでございマスです、よろしくお願いしちゃったりするんでございマスです』、なんて変なこと言うわけよ
元々クワトロの旦那っていうか、シャア・アズナブルは大人の女性はあんまり好きじゃないでしょ?そこにこれだもんね、どんな嫌味を言われるかと思ったら
「はっはっは、私のことが怖いかね、ラミア君。こんな風体だが、君をどうにかしようと言うつもりはないので、安心して欲しい。むしろ私としては、君のようなグラマスな女性と、これから頻繁に顔を合わせられるかと持ったなら、町内での仕事にも力を入れられるというものだがね」
うん、素だった
遠回しの嫌味とかブラックジョークじゃなくて
唖然としてるアタシと、そこのジョッシュみたいに事情が分からなくて、きょとんとしてるラミアを置いて、あの旦那は颯爽と去って行っちゃったんだ


「ラミアの顔って幼女顔だったっけ?」
「いや~、実に精悍な顔つきの、立派な成人女性だけど」
「リューネ、そりゃあきっと陽炎か幻だよ、うん」
とりあえず聞かなかったことにしたい連中多数。リューネだって見なかったことにしたいのだが、インパクトが強烈すぎて忘れられない
次にポン、ッと手を叩いたのはシローだった。幼女で思い出したことがあるらしい
「ああ、そう言えばこんなこともあったんだ」

~シローの証言~
3日前の事さ
俺が夜回りで横町の北側を歩いていた時、建物の脇から黒い影が飛び出して、俺は泥棒でも出たのかと思って、咄嗟に追いかけ始めたよ
ところが後で判ったんだが、そいつは夜中に悪戯心で外に遊びに出ていた、メダイユ家のアナお嬢さんだったのさ。お嬢さんはこれまた足が速くてな、小さいお体であっちこっち逃げ回る。俺は不覚にもお嬢さんに翻弄されて、右往左往していたんだよ
ところがしばらくした頃、これまた別の建物の脇から出てきた男が、お嬢さんを静止して見せたんだ
誰あろう、あのクワトロの旦那だったんだ
俺は咄嗟にヤバいと思ったね。だってあんなことがあった後だろう?お嬢さんもさすがに察して、身構えて後ずさりしてたんだ。ところが、だ
「アナ姫、メダイユ家の跡取りともあろう方が、このような夜更けに、好奇心に任せて外出するのは感心しません。世俗を知ることも、確かに上に立つ者には必要でありましょうが、貴方を心配しているお付きの方々のことを、一時でも考えましたか?」
・・・なんてしっかり諭し始めたから驚きだね
お嬢さんの方も方で、これには思う所があったみたいで、ハッとしてたよ
で、ちょうどそこに、侍女のリュポフさんと警備のゲイン君が辿り着いたんだ
「さぁ姫君、お二人にきちんと謝りなさい。そうして二度と、このようなことはなさらぬよう。このクワトロ・バジーナ、切にお願い申し上げます」
てな風に言われりゃ、あのアナお嬢さんだって素直に言うことを聞かざるをえない
唖然としている俺の目の前で、お嬢さんは何事もなかったようにお屋敷に戻っていったよ


「幼女に反応しない・・・だと?」
「あれ、地震?何か目の前が揺れてるんだが」
「それきっと目眩だよ。あ、俺吐き気もよおしてきたわ」
「なんか・・・聞いてる俺の方が胃が痛くなってきた・・・」
思い思いの神経痛を起こしている面々を前に、しかしジョッシュとリムは何事かさっぱり判らず呆然としている
「なぁギュネイ。↑を聞いていると、至って常識的で紳士的な男性の姿が思い浮かぶんだが、何でみんなそんなになっているんだ」
「ん、これ読め」
と言うわけで皆様、第五話を舐めるようにご覧下さい
「・・・納得した」
「分かって貰ってよかったぜ」
そんなこんなで、とてもあのシャアとは思えない言動が続いたため、逆にアムロの方がストレスを感じてしまい、『俺が一番シャアを上手くあしらえるんだ』と、微妙に訳の分からないことを呟きながら、自室で白目剥いて体育座りを始めてしまったらしい
「いろいろと慰めたり叱咤したりしたんだけどね・・・」
「どうもこう効果が出ないんだよ。何とかしたいんだけど」
大の大人が大勢束になって頭を抱えているのは、端から見ると実に異様な光景ではあった
「へ~ぇ、アムロ・レイって意外とナイーブなんだ。なんか失望しちゃったな」
「ちょとクェス、失礼だよ、そんなこと言っちゃ」
番屋の見学に来ていた、旗本の娘・クェスとブライトの息子ハサウェイが、遠くでそんなことを言っていたのを知る者はいなかった
萩野富士の祭貢神社
事態を重く見た仕事人五人が、社に揃って相談事をし始めていた
「アムロの旦那には、いろいろと世話になってるからなぁ。放っとけねぇぜ」
デュオが危ない橋を渡ろうとする度、それを察したアムロが裏からいろいろと手を回してくれているのを、知らない彼ではない
「それは俺も同じだ」
ヒイロの状態であろうと正樹の状態であろうと、何らかの形でアムロの力によって、危機を脱したことが多数あるのだ
「さて、どう対処しましょうかね」
と、カトルが切り出した時だった。社の外に複数の人の気配を感じ、五人は慌てて押し黙り、気配を殺して外の様子を伺う。そこに居たのは、ギュネイとジョッシュであった
「まったく、気持ちは分からんでもないが、アムロ・レイともあろう男がそんなこっちゃ困るんだよ」
「それとこの神社と、何の関係があるんだ?」
ジョッシュはまだ祭貢神社の謂われも何も知らないので、ギュネイの意図を量りかねているのも無理はない
「この社にちゃんと祈れば、願いを叶えてくれるって話なんだぜ」
ギュネイはそう言うと、昨日稼いだ二十文をポイッと賽銭箱に投げ入れた
「神様、このお社の神様。アムロ・レイをいつもの調子に戻してくれ、頼むぜ」
ぱんぱん、と柏手を叩いて社から離れるギュネイに、ジョッシュはまだ納得行ってない様子であった
「分からないな、ギュネイ。俺には、お前とそのアムロさんの接点が見えないよ」
「接点なんて無いさ。俺が一方的に、目標の一つにさせて貰ってるだけだ」
彼が先の戦で見た、シャアとアムロの姿はインパクトが強すぎたのかも、知れない
シャアはともかく、アムロが好きで戦場を駆け抜けていたわけではない、というのは最近になって知った話だ
そうは言っても、彼が怪しい宗教に入って修行したのも、にうたいぷ育成通信講座を大枚叩いて受講したのも、彼らのようになりたいという願望有ってのことだった
「憧れている相手が落ちぶれたら、喩え相手が俺のことを知ってようが知るまいが、何とかなって欲しいと思うもんだろ?」
「ああ、その考えは分かるな」
言うなれば、花形スターがノイローゼにかかったら、ファンが心配して励ましの手紙を送るのと、同じようなモノなのだろう
「仮にも俺のような男が、その座を狙ってるんだぜ?自分でそこから転げ落ちるなんて、許せたもんじゃない」
「言うなぁ。そこまで公言するからには、アムロさんが立ち直ったら、すぐに追いつける自信がある、って事か?」
「うっ・・・そいつは」
ジョッシュは優しそうな言動のわりに、時々こう言う痛い所をガツッと付いてくる。今回もかなり痛い所を突かれたギュネイは、二の句が継げない状態になってしまった
「ハハッ、まぁいいさ。お前が昨日の稼ぎを全部入れるくらいなんだ。きっと神様も願いを聞いてくれるさ」
「ちっ、他人事だと思いやがって・・・行くぞ、今日の仕事まで時間がない」
顔を真っ赤にして山を駆け下りるギュネイを、ジョッシュは慈愛に満ちた瞳で見つめながら後を追っていった

彼らが完全にいなくなったのを見計らい、仕事人五人もふと肩の力を抜いて互いを見やる
「・・・ああいうの“ツンデレ”って言うのかね?」
「何か違う気はするが、似た臭いはするな」
遠くでギュネイのクシャミがしたような気がする
それは置いといてとりあえず、正式にこの件が“仕事”になったことだけは確かだった
「気になって調べては置いたが、クワトロ・バジーナなる人物は、確かに数週間前まで石見銀山奉行の元で、勤務していたのが明らかになっている」
トロワの花火役入手先の一つに、石見銀山の近くの工場があるので、そこを通じて調べていたらしい
「容姿そのものは、現状のあの男と変わり無い」
「と、いうことは、シャア・アズナブルが別人の名を使い、横町に舞い戻ってきたという可能性が、若干否定されたと言うことか」
五飛の指摘するとおり、何らかの形で名前や戸籍をシャアが買い取り、素知らぬ顔をして戻ってきたであろう、と全員予想していたがために、少々意外な調査結果だった
「特記事項があるとすれば、今回の人事異動の少し前、銀山での精錬工場で事故があってな。クワトロ・バジーナも、その時精錬で出るヒ素を少々吸い込み、一時危篤状態に陥っていたようだ」
よい子のために説明すると、日本の古い方法での銀の精錬では、酸化鉛が大量に粉塵状態で出るので、うっかり吸い込むと鉛中毒を起こすのだ
トロワが使う毒もその一部だったりして
「だが死んだのではないだろう?」
「ああ、どうにか息を吹き返したらしい」
「ふ~ん・・・どうも、こりゃぁ議論しても時間の無駄ぽいぜ?」
デュオはそう言うと、視線をきょとんとしながら聞いているカトルの方に向けた
「え、僕ですか?」
「ふん、なるほどな」
デュオの意図を察して、ヒイロは珍しく彼を褒めたような言い方をする
「と言うわけで、囮よろしく、カトル」
「・・・」
にこやかに肩を叩くデュオを、引きつった顔で見上げているカトルが哀れであった
「よし、なら行動を開始するか。いいか、鈴々奈?」
一応元締めである彼女に許可を取ろうと、ヒイロが社の奥で静かにしている彼女に声をかける。それより何より、先ほどから一言も彼女が口を開かないのも、ヒイロには心配ではあった
「・・・胸」
「なに?」
突然鈴々奈がそう言うので、ヒイロは眉をしかめた
「胸が・・・有ったほうが良いのですね、ヒイロは・・・」
どうやらリューネと正樹モードで話していた内容を、うっかり聞かれてきたらしい
「な、なっ・・・!誤解だ鈴々奈、俺はそう言うことが言いたかったのではなく・・・!」
「いいんです、どうせ私はまだ年端もいきませんし、これからスタイルがよくなるかも分かりませんし・・・」
そこまで言うと、鈴々奈はさめざめと泣きながら社を飛び出し、森を駆け抜けていったしまったのだ
「待ってくれ鈴々奈、俺の話を聞いてくれっ!!」
慌てて後を追うヒイロを、他の四人は呆れた顔で見送っていた・・・
「はいはい、ぞっこんってやつね」
「今回ヤツは抜きで行くぞ」
「まったく、鈴々奈もヒイロも何がしたいのか分からん」
まぁこう言うことはよくあることなので、全員慣れた様子でそれぞれの役割のために散っていった
鬼も眠る丑三つ時
道ばたで怪我をした少女が、助けを求めてうめいていた
・・・が、それはカトルの変装・マイであり、幼女とまでは行かないまでも、少々ロリっぽいその顔つきと容姿で、シャアをおびき寄せようという魂胆であった
もちろん怪我なんぞしてないのだが、要するに演出である
と、自分に近づく誰かの気配を感じ、マイ(=カトル)はそれがターゲットかどうか確認しようと、わざと顔を弱々しく上に上げる・・・と
「よ~ぉ、お嬢ちゃん。こぉ~んな夜更けに、一人でどぉしたかなぁ?」
真っ暗な夜なのに、目立ちまくる黄色い羽織で身を固めた、妙な巻き毛男
横町でも悪名高い、ジェイソン・ベックである
(やばっ、一番引っかけちゃいけないのが来ちゃったよ!)
まぁこういう輩は、問答無用で返り討ちにするのは、仕事人でなくても常識人なら当然である。しかし今のカトルは、ドSモードのレビ様ではない上、ここでコイツをのしてしまったら、シャアが近づいてこなくなるではないか
「よく見たらずいぶん可愛い顔してんじゃねぇの。お前みたいなのが好きな、お偉いさんは結構いるんだよなァ」
ベックの手が、がっしとマイの手を掴む
(まずいよ、ちょっとデュオどうにか・・・)
自分の周囲で張っているであろう、デュオ達の手を借りねばと思った瞬間だった
「その手を離さないか」
マイにとっては聞き覚えのある声がして、ベックの身体が宙を舞った
「ぐはっ!・・・てめぇ、なにしやがんだ!!」
「その台詞をそっくりそのまま、君に返そう」
彼を組み伏せているのは、間違いなくクワトロ・バジーナその人であった
「君、怪我はないか」
「は・・・はい・・・」
わざと弱々しくそう応えるマイは、彼方から誰かが猛スピードで駆けよってくる音を聞いた
「シャアァァァァァ、やっぱり貴様ぁぁぁぁッ!!」
そのままの勢いで、猛烈な跳び蹴りを食らわせたのは、誰有ろうアムロである
どうも、クワトロとマイが接触したのを、電波で感じたらしい
(アムロの旦那、反応早ッ!)
(立ち直るのも早いな)
「何をするんだね、アムロ君!」
「とぼけるなシャア、貴様というヤツはいつもいつも・・・」
だが、二人がそう言い合い始めた隙を突き、クワトロから開放されたベックが、マイの手を再び掴んで逃走し始めてしまったのである
「ぬっ、待て!」
「待つのは貴様だ、今度という今度は引導を・・・」
ベックを覆うとするクワトロを、いつもは絶対に見せないような執念深い力で、がっしと掴んで放さないアムロ。こりゃどうしたもんか、と次の手を打ちあぐねているトロワ達の耳に、バキッという物騒な音が入ってきた
「アムロ君、いい加減にしたまえ!」
クワトロの拳が、アムロの頬を打ったのである
「な・・・殴ったな?ブライトに殴られて以来、誰にも殴られてないのに!」
「甘ったれたことを言う!私に何の怨みがあるか知らないが、今君がするべき仕事は横町の治安を護ることではないのか。それを、よく分からない私怨に目を眩ませ、真の悪漢を逃してなんとする!」
そうびしっと言いきるクワトロの姿が、何故か輝いて見えてしまう五飛達
(あのオッサンが正論言ってるよ)
(ああ、非の打ち所がないほどの正論だ)
(なんということだ、実に正義じゃないか)
三人の心のツッコミが、クワトロに聞こえたかどうかは定かではない
そしてアムロの方も、クワトロの叱咤が余りに普通なので、次のリアクションが取れずに困惑していた
「とにかくヤツを追わねばならん。君がやらないのなら、私一人で行く」
「な・・・ま、待て。俺も行く!」
ダッと走り出したクワトロを、アムロも慌てて追い始めた。ほぼ並んで走る状態になった時、アムロは意を決してクワトロに質問を投げかけた
「きさ・・・いや、貴方はシャア・アズナブルではない、のか?」
「よく間違われる」
額にアムロが合戦で付けた傷に、よく似た痕があること、口調がシャアと似ていること、等々の理由で、こう言ったトラブルにはよく遭っている、とクワトロはこれまた正直に彼に応えた
その言葉を、後ろからこっそり追っているデュオ達も聞いていた
「あのチンピラを捕らえたら、私のことは飽きるほど調べると良い」
「・・・分かった。そこまで言うなら、とにかく今は目の前のことを片付ける」
クワトロの潔さが、アムロにいつもの調子を取り戻させたようだった
「頼りがいのあることだ」
アムロとクワトロの走るスピードも、角を曲がるタイミングも、何もかもがだんだん調子を合わせてきていた
(貴方とはどうやら気が合いそうだな)
(フ、私もそう思ってきた所だったよ)
にやりと笑い合う二人は、いつの間にかニュータイプの電波会話に突入していた
互いの力と気持ちを、瞬間的に交わすことができるというこの力は、二人の息をきっちりと合わせ始めていた・・・
猛スピードで横町を走り抜けていたベックだが、後ろを振り返るとあの金髪と茶髪の姿は無いようだった
「へ・・・へへっ、どうやら奴らを巻いたようだな」
ニタリと笑っているベック。手元のマイは困ったような顔をしているが、その実
(巻いてくれて助かったなぁ。そろそろ、本気だそうかな)
などと思っていたわけだが・・・
と、そんな二人の目の前に突き刺さる、一輪のバラ
「闇に紛れて人々を泣かす悪党よ!」
「とっと隠れ家に帰るがいい!!」

凜とした声がするのは、ベックとマイがいる路地を見下ろす民家の屋根。そこに二つの人影が、びしっとポーズを決めて立っていた
「「ご町内の平和を守る、“二人はNT(ニュータイプ)”!とは、我々のことだ!」」
互いの背中を預け、きらりと“格好いいポーズ”をキメ合うアムロとシャア
(意外と乗りが良いな、アムロ君)
(貴方がシャアでないと分かったら、何かこう吹っ切れたみたいだ)
吹っ切れすぎであるというのは、突っ込んではいけないのだろうか
どうにか追いついてその様子を見ていたデュオ達は、それをどう評して良いか分からずに呆然としていた
(どう見てもプリ○ュアです、旦那達)
(とりあえず・・・美味しい所取られた?)

一方でベックは、よく分からない急展開に、頭の血があっという間に沸点に達してしまっていた
「んだそりゃぁ!しらねーぞそんなの!!」
「今決めたコンビ名だからな、知らないのも無理はない」
すっぱりと言いきるクワトロ。ベックはずっこけてしまう(ついでにマイも)
「バカにしやがって!じゃぁ逆に俺が教えてやらぁ。俺にそーゆー“ショータイム”していいのは、ロジャー・スミスと相場が決まってやがんだ。てめぇらじゃ役者が違うんだよ、役者が!!」

「む?」
夜中だというのに、ロジャーは何か思う所があったのか、ベッドで目を醒ました
おもむろに窓辺に目をやると、相変わらずの無表情で、ドロシーが夜風に身を任せていた
「どうしたのロジャー」
「やぁドロシー・・・いや、誰か私を呼んだような気がしてな」
「自意識過剰なのね。この平和な横町に限って、貴方のネゴシエーションは必要とされてない。そうでしょう?」
「・・・私に“寝ていていい”と言いたいなら、もう少し言いようがないのかね。R・ドロシー・ウェインライト?」

「無駄口を叩くのもそこまでだ!」
ベックの悪態もモノともしない二人は、華麗に屋根から身を躍らせる
「うおっ!?」
思わぬ二人の行動に、ベックは相変わらず腕に抱えたままのマイを盾に取ろうとするが
「スカー○ットニー○ル!!」
シャアが放つ深紅の光線が、ベックの急所を狙い違わず撃ち抜く。声も上げられないほどの激痛に襲われ、マイを掴んでおくことさえできなくなるベック
(旦那達!中の人ネタまずいってぇ!!)
マイが心の中で突っ込んでいたが、二人は意に介している様子もない
「ペガ○ス流○拳!」
そうしてその隙を突き、アムロの見えざる拳がベックを袋だたきにし、彼を地面に打ち伏せたのだった

こうして横町に、新たなる正義の味方が誕生した
とはいえ
「・・・よかったのか、これ」
「一応依頼どおり、アムロさん復活したからいいんじゃない・・・のかな」
「クワトロの旦那の正体は・・・どうするよ」
「本人がああ言っている以上、なんか詮索しづらくなったな」
仕事人四人の方は、どうもオチに納得行ってなかったりする
次の日の朝方の頃
思わず駆けだしてしまい、後に引けなくなった鈴々奈は、とぼとぼと町中を歩いていた
あてどなく町を彷徨っていた彼女は、ぼっとしていたがためにうっかり人にぶつかってしまった
「ああっ・・・も、申し訳ありません」
「いや、私も気づかなくてすまない」
ハッと顔を上げたのは何故だったろうか
その声が、彼女にとって妙に懐かしかったからかもしれない
が、目の前にいる長身の男性は、表情を覆い隠す仮面をしていた
「鈴々奈ぁ、よーやく見つけたぜぇ」
ようやく彼女の姿を捕らえたヒイロが、彼女に声をかけた。町中では正樹モードでなくてはならないため、いやに軟派な状態ではあるが
「ヒイ・・・いえ、正樹・・・さん」
どうもこう言う状態はばつが悪い。もじもじしている彼女を、仮面の男はじっと見ていた
「鈴々奈・・・君は、鈴々奈というのかね」
「え?は、はい」
次の瞬間、男の口は何かを紡ごうとしたが、乱入者に名によって続きを封じられてしまった
「シャア!ようやく姿を現したな!!」
仮面の男に反応した、そう言う意味ではほとんど病気のアムロと
「正樹、あんたって人は!!」
微妙に嫉妬心が湧いてしまったリューネである
「私はゼクス・マーキスだ!それ以上でもそれ以下でもないっ!!」
「わーっ!?やめろリューネ、何で怒ってんだよ!!」

またも新キャラ登場のスパロボ横町
騒動は、まだまだ続くようである
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テーマ : スーパーロボット大戦 - ジャンル : ゲーム

2009/05/10 02:23 | SS【スパロボ系】-スパロボ仕事人COMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

どうも、あくとです。
今回は続きが気になる終わり方でしたね。
いったい、クワトロに何があったのでしょうか?
と、まぁそれはおいといて、スパロボの新作の話ですが、スパロボの周期を見るにおおよそ2~3年に一回新作が発表されているように見えます。
2005年にサルファが発売された3年後の2008年にZが発売されたり、2007年にWが発売された2年後の2009年にKが発売されたりと。
と、言うことは次の新作が発売されるのはおおよそ来年か再来年だと思います。
事実スパログの寺田Pの記事に一年後(2010年のことと思われる)にはもっと忙しくなるみたいなことが書かれています。(参照
http://blog.spalog.jp/?eid=721460#sequel
と、いうことは来年はスパロボの新作やリメイクラッシュか!?
まぁ、個人的には今年は大学受験なんでできれば来年度まで新作は発売して欲しくない(おい)。

No:1299 2009/05/10 11:56 | あくと #6Z79jEeU URL [ 編集 ]

Re: タイトルなし

何かいろいろと間違ったブログ経営をしているような気がしてきている管理人です

あくとさん・・・
クワトロさんはね・・・ええ、まぁいろいろあったようなのですよ
とりあえずこのままクライマックスに持っていくか、もうちょい引っ張るか検討中

それにしてもスパロボ新作一年待ちか・・・干されて干からびそうだぜ

No:1300 2009/05/11 00:24 | あるす #- URL [ 編集 ]

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